蝋人形は医学的な必要から誕生した。研究に使用する死体の保存のため、蝋解剖模型が作られたのが蝋人形の原型である。死体を蝋人形化する手法は17世紀にヨーロッパで完成された。研究用の人体パーツの代わりとして作成された蝋の手足や器官もその発達を促した。後年には、歴史上の重要な場面を再現する教育的ページェントの目的で、世界各地に蝋人形館が作られた。さらに現代に入ると、各界の有名人や偉人の姿を模した蝋人形が人気を博すようになった。現在の蝋人形館は、キワモノ的見世物として秘宝館化している。

 1835年、フランス人のマリー・グロショルツによってロンドンに開館された「マダム・タッソーの蝋人形館」。マダム・タッソーはギロチンでチョン切られたマリー・アントワネットの生首を持ち帰り、デスマスクを作成した逸話をもつ人物。フランス革命の血なまぐさい再現場面、エルヴィス・プレスリー、マリリン・モンローなどの有名人の蝋人形が定番。日本人では似ていない横綱・千代の富士、なぜか吉田茂元首相が展示されている。ニューヨーク館にはジュリアーニ市長、香港館には浜崎あゆみの蝋人形も。アメリカ初の蝋人形館は、1949年、ジョージ・L・ポターがフロリダに開館した。

 1970年、東京タワー内に、日本初、アジア最大の蝋人形館が開設された。「ハリウッド映画スターホール」、激しく気分を害されることうけあいの「拷問人形集」などがあり、長さ12メートルの「最後の晩餐」を模した巨大ブースは圧巻だ。ジャーマン・ロック・フリークの館長の趣味を反映し、ジャーマン・ロックの歴史に残る三大巨頭の人形も展示してあるものの、誰も知らないので意味がない。変わった蝋人形館としては、高知県にある「龍馬歴史館」。坂本龍馬33年の生涯を180体の等身大蝋人形が再現。土佐の成立、龍馬誕生から近江屋の惨劇まで26場面に分け、彼を取り巻く人物とともに紹介している。

 モデルの石膏型を取り、蜜蝋または樹脂とプラスティックの合成物を流し込む。型取りが終わったものに、血管やしわなどの細部を描き込む。髪の毛を植え、ガラスの目玉や入れ歯などを装着する。

 一般の蝋人形製作所に頼めば、個人の等身大人形もオーダー可。杉並区にある「蝋プロ」では、「故人あるいは歴史上の人物などの場合、一枚の写真、絵からでも製作致します。製作に要する日数は、 通常 1か月?半年です」とのこと(同プロHPより)。

 Q.どういうところから製作の発注を受けますか?
A.最近は、民俗資料館、個人的にやっている小さな美術館や記念館、またテレビの特撮のためなどが多い。一方まるっきりプライベートな発注もあり、例えば、女房・娘・旦那の蝋人形を作ってくれと言われることもある。そういう場合は、えてして“自分の前からいなくなってしまった人”、つまり離婚して出て行った妻、嫁にいってしまった娘などが多い。気味悪いですが、実際の話です。また、蝋人形の製作は一体につき150〜800万円かかるので、発注してくる方もお金持ちでわがままな方が多い。つまり、“わがままで反抗的だった女房も、人形にしておけば優しく微笑んでいるので手許においておきたくなる”、空間を蝋人形で埋めているのでしょう。フフ。

Q.今までに受けた変なオーダー
A. 作家の都築響一さん(著書「TOKYO STYLE」「珍日本紀行」等)に依頼され、人のプライベート・パーツ(!)だけを製作した。フランスの美術館や原宿で展示されたが、警察に逮捕されるのではないかとドキドキしていた。大丈夫だったので・・・良かった・・・。

Q.生きた人間で蝋人形を製作することはできますか?
A.そんなことをする必要はない(キッパリ)。協力してくれたら実験してみてもいいが・・・。



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