About The Movie

出版から72年目の奇跡 名作の“その後”の物語

1943年に出版されて以来、270以上の言語・方言に訳され、1億4500万部以上を売り上げてきたサン=テグジュペリ不朽の名作「星の王子さま」。砂漠に不時着した飛行士と、小惑星からやって来た小さな王子との出会いと別れをつづったその物語は、世界中の人々に長く愛されつづけてきた。時代を超え、文化の差も超えて読む者の共感を呼ぶのは、そこにある普遍的なメッセージ。平易な言葉で語られるそのメッセージは、読むたびに新たな解釈を生み、どこまでも深く読む人の心をつかんで離さない。

「星の王子さま」は、世界中のアーティストや作家たちからも愛される作品である。アニメーション監督の宮崎駿も、自身の推薦書50冊リストに「星の王子さま」を挙げている(岩波新書「本へのとびら」)。これまでオーソン・ウェルズやウォルト・ディズニーといった伝説的なアーティストたちが映画化を試み、いずれも実現には至らなかったが、出版から72年目にして初のアニメーション映画として映像化が実現。そして本作は、サン=テグジュペリ エステート(権利管理者)が初めて認可した、「星の王子さま」のその後を描く物語である。

原作者 アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリについて

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原作者 アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ

フランスの作家、飛行士。1900年6月29日にリヨンで生まれ、1944年7月31日、マルセイユ沖で偵察飛行中に行方不明となる(1945年9月20日に死亡が認知される)。貴族の家系出身で、5人兄妹の長男。4歳で父親を亡くすも、愛情深い母親のもと、幸せな幼年時代を過ごす。

1917年、バカロレア(大学入学資格)取得後、いっときパリ美術学校建築科に籍を置く。1921年、兵役で航空隊を志願、民間飛行免許も取得する。1926年、郵便飛行を業務とするラテコエール航空会社に入社、1929年、処女作『南方郵便機』を出版したあと、南米担当の営業主任としてブエノスアイレスに赴任する。1931年、中米出身の女性コンスエロ・スンシンと結婚。同年に発表した『夜間飛行』(1931年)はベストセラーとなり、いちやく人気作家となる。 第二次世界大戦勃発後の1940年、アメリカに亡命。1942年、ニューヨークで『星の王子さま』を執筆後、愛国心に駆られて戦線に復帰、332飛行部隊へ入隊する。マルセイユ沖で消息を絶ったのは任務中のことだった。

ほかの代表作に『人間の土地』(1939年)、『戦う操縦士』(1942年)など。

異なる技術で描かれるふたつの世界

「どうすれば原作を損なうことなく映画化できるのか?」世界中で愛され、大切にされている作品をもとに長編アニメーションを創り出すことは、その作品が愛されていればいるほどしり込みしたくなるほどの大問題になる。

マーク・オズボーン監督が出した答えは「原作を膨らませるのではなく、包み込む」こと。

老飛行士が語り、女の子が想像する「星の王子さまの世界」は原作のままに誰もが知る挿絵のイメージを最大限に活かし、手触り感の残るストップモーション・アニメーションで原作の詩情や美しさを完璧に再現。一方、女の子と老飛行士が住む「現実の世界」は、臨場感のあるCGアニメーションで構築。ふたつの手法をもとに二重構造の世界を創り出すハイブリッドアニメーションの誕生である。

「星がきれいなのは、見えないところに花が咲いているからだよ」「大切なことは、目には見えないんだ」「さがしものは、たった1本のバラや、ひとくちの水の中にあるかもしれないのに」 原作を印象的なものにしている王子の言葉の数々は、物語のその後を描く「現実の世界」にも反響し、物語をより感動的に、メッセージをより鮮やかに浮かび上がらせている。

アニメ界の一流アーティストが結集

監督は、オスカーにもノミネートされた『カンフー・パンダ』で知られる偉才マーク・オズボーン。世界的な名作を現代のアニメーション映画にするという一大プロジェクトに8年がかりで挑んだ。集結したスタッフは総勢250人。ディズニー、ピクサー、ドリームワークスでもトップクラスの人材がスタジオを越えて集結し、最高レベルの技術と芸術性を提供。『塔の上のラプンツェル』で髪の動きを描いた四角英孝がキャラクター監修を務め、アカデミー8冠のハンス・ジマーが音楽を手がけている。

ボイス・キャストにも妥協はない。アカデミー受賞俳優を含む理想のメンバーが顔をそろえたオリジナル・キャスト同様、日本の声優陣も豪華を極める。主役の女の子を鈴木梨央が演じるのをはじめ、瀬戸朝香、津川雅彦、伊勢谷友介、竹野内豊、池田優斗ら実力ある俳優陣や、滝川クリステル、ビビる大木らが世界的名作に命を吹き込む。

そして、日本語吹替版の主題歌を松任谷由実が担当。「星の王子さま」を長年愛読する彼女は、自身のこれまでの音楽活動とこの物語を重ね合わせ、かつてない共感をおぼえたという。サン=テグジュペリの生地フランス・リヨンを訪れ彼の創作の源を追体験し、新曲を書き下ろした。

いま、9歳の女の子が、星の王子さまに会いに行く——

よい学校に入るため、友だちもつくらず勉強漬けの毎日を送る9歳の女の子。名門校の学区内に引っ越してきたが、隣には風変わりなおじいさんが住んでいた。ある日、隣から飛んできた紙飛行機が気になって中をあけると、そこ書かれていたのは、小さな王子の物語。話の続きが知りたくてたまらず、女の子は隣家を訪ねた。王子の話を聞き、一緒に時を過ごすうちに、二人はかけがえのない友だちになっていく。しかし、ある日、おじいさんが病に倒れてしまう。女の子は、もう一度王子に会いたいと言っていた彼のために、プロペラ機に乗って、王子を探す旅に出た——

女の子

9歳。進学校に進む為、母親の勧めで学区内に引っ越してきた。勉強の邪魔になるので友達はいない。

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(日本語吹替版 鈴木梨央

(字幕版 マッケンジー・フォイ

お母さん

物語に登場する唯一の女の子の肉親。仕事で家を空けることが多い。愛する娘の将来を思うあまり友達を作る時間よりも勉強ばかり押しつけてしまう。

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〈日本語吹替版〉 瀬戸朝香

〈字幕版〉 レイチェル・マクアダムス

飛行士

86歳。若い頃、不時着した砂漠で不思議な男の子に出会った話を誰かに伝えたいと思いつつ今に至る。女の子の隣の家に住んでいる。

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〈日本語吹替版〉 津川雅彦

〈字幕版〉 ジェフ・ブリッジス

星の王子

B612という、家ほどの大きさしかない小惑星からやってきた不思議な少年。

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〈日本語吹替版〉 池田優斗

〈字幕版〉 ライリー・オズボーン

キツネ

ひとりぼっちの星の王子に初めてできた友達。大切なものに気付かせてくれる存在。

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〈日本語吹替版〉 伊勢谷友介

〈字幕版〉 ジェームズ・フランコ

ヘビ

砂漠をさまよう星の王子の前に現れた者。人を死に至らしめる強力な毒を持つ。

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〈日本語吹替版〉 竹野内 豊

〈字幕版〉 ベニチオ・デル・トロ

バラ

星の王子が大切に世話するも、そのわがままさに疲れ果て、星に残してきた恋人。

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〈日本語吹替版〉 滝川クリステル

〈字幕版〉 マリオン・コティヤール

ビジネスマン

あらゆる星を所有しながら、さらに多くを求めてやまない、欲にまみれた男。

〈日本語吹替版〉 土師孝也

〈字幕版〉 アルバート・ブルックス

うぬぼれ男

褒められたくて仕方がない、お辞儀をするために帽子を被る変わった男。

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〈日本語吹替版〉 ビビる大木

〈字幕版〉 リッキー・ジャーヴェイス

王様

自らが頂点で、その命令によって全てが統治されていると勘違いしている男。

〈日本語吹替版〉 坂口芳貞

〈字幕版〉 バッド・コート

教師

子供を教育して一律に従順な大人にするために尽力する男。

〈日本語吹替版〉 壤 晴彦

〈字幕版〉 ポール・ジアマッティ

監督 マーク・オズボーン Mark Osborne

 1970年生まれ。広範なアニメーション技術に精通し、米アカデミー賞に2度ノミネートされたフィルムメーカー。同賞長編アニメ映画賞にノミネートされた2008年の『カンフー・パンダ』で監督を務め、世界的にその名を知らしめた(現在までの全世界興収は6億5000万ドル。もっとも利益を生んだ歴代アニメ映画上位10作の1つ)。98年の『More』ではオスカー短編アニメ映画賞にノミネートされた。

 ドリームワークスで技術を磨き、商業的なアプローチをとらなくても観客動員数を減らすことなく成功を収めた。そのアプローチは、オズボーンの芸術的野心と専門的な技能に魅力を感じた一流のアーティストたちの共感を呼んだ。この『リトルプリンス 星の王子さまと私』では、ドリームワークス時代に自身で定めた作品としての高い水準を維持したうえで、メインストリームの国際的な大作映画を目ざした。

脚本 イリーナ・ブリヌル Irena Brignull

 大学で英文学の学士号を取得。TV局、映画会社に勤めながら経験を積み、脚本家への転身を見事に果たした。英BBCで脚本チームを管理し、トム・クレッグ監督、ショーン・ビーン主演のTV映画「ブラヴォー・ツー・ゼロ/サンドストーム」(99)などの作品に携わった。その後、ドッグスター・フィルムズで企画開発部門主任を担当。同社では、米アカデミー賞を複数部門で受賞したジョン・マッデン監督の『恋におちたシェイクスピア』(98)、同監督の『コレリ大尉のマンドリン』(01)、ティム・ファイウェル監督、ロモーラ・ガライ、ローズ・バーン、ビル・ナイ主演の『I Capture the Castle』(03)で、脚本編集を務めた。

 最近では、フォーカス・フィーチャーズ&ライカ製作の長編アニメ映画『The Boxtrolls』(14)の脚本を手がけ、アニー賞脚本賞にノミネートされた。アンソニー・スタッチ、グレアム・アナベルが監督した同作は、オスカー長編アニメ映画賞にノミネートされた。

 そのほかに脚本を手がけた作品には、ワーキング・タイトル・テレビジョン製作、グレアム・シークストン監督、ジェイムズ・ダーシー、ルーシー・パンチ主演のTV映画「カム・トゥギャザー もうあなたしか見えない」(02)、スカイ・テレビジョン製作、Aj(アナベル)・ヤンケル監督、ティム・ロス、ジョン・シム、ケリー・マクドナルド主演のTV映画「Skellig: The Owl Man」(09)などがある。

製作ディミトリー・ラッサム Dimitri Rassam

 フランスで映画一家に生まれ、2005年、23歳のときに、自らも製作会社チャプター2を創立した。初めて手がけた長編映画はニコラ・バリー監督の『Les enfants de Timpelbach(Trouble at Timpetill)』(08/製作費1300万ユーロ)で、それが幸先よいスタートとなり、その後、同社ではこれまでに9本の映画を製作している。

 チャプター2での活動と並行して、プロデューサーのアトン・スマーシュ、アレクシ・ヴォナールと提携し、彼らのオニキス・フィルムズと映画『アップサイドダウン 重力の恋人』(12)など、メソッド・フィルムズ製作のTVシリーズ「アイアンマン ザ・アドベンチャーズ」(11~12/製作総指揮)、メソッド・アニメーション製作の「Le petit prince (The Little Prince)」(12/製作)などで組んだ。

 新たな人材の発掘、そしてフランス国内にとどまらず国際的な意欲作の企画・製作を積極的におこなっている。その中には、マチュー・ドラポルト、アレクサンドル・ド・ラ・パトリエール監督の『Le Prenom (What’s in a Name?)』(12/フランスだけで観客動員330万人、興収3000万ドル)、アンドレア・ディ・ステファノ監督、ベニチオ・デル・トロ、ジョシュ・ハッチャーソン主演『Escobar: Paradise Lost』(14/製作費2500万ドル)などがある。15年2月にフランスで公開されたコメディ『Papa ou Maman』は、最初の4週間で観客動員250万人を記録し、本年第1四半期にフランスで公開された中でもっとも成功を収めたフランス映画になった。

 14年の初めに、前述のスマーシュ、ヴォナールとともにチャプター2、オニキス、メソッドの3社を合併し、国際的な製作会社オン・エンターテイメントを創立した。同社は、実写映画、アニメ映画、そしてTVシリーズなどを手がけている。

製作 アトン・スマーシュ Aton Soumache

 1971年生まれ。フランスのパリ政治学院を卒業後、25歳で最初の製作会社オニキス・フィルムズを創立し、野心的な映像と描写、斬新な技術を生かした映画の製作を目指した。これまでに製作を務めた国際的な市場をターゲットにした15本の映画には、『ルネッサンス』(06/アヌシー国際アニメーション映画祭長編映画賞受賞)、3Dアニメ映画『The Prodigies』(11/製作費2500万ユーロ)、ディミトリー・ラッサムとともに製作した『アップサイドダウン 重力の恋人』(12/製作費6000万ユーロ/主演:キルステン・ダンスト、ジム・スタージェス)、そして2015年公開の3Dアニメ映画『Mune, le gardien de la lune』などがある。

 1998年にアレクシ・ヴォナールと、画期的なCGIアニメ・シリーズを製作するためにメソッド・アニメーションを創立。過去15年で20本以上のアニメ・シリーズ(放送枠として200時間以上)を製作し、番組を全世界に販売する一方で、フランスで2番目に好成績を収めたアニメ・プロデューサーになった。メソッド・アニメーションは今では、ヨーロッパのアニメ・シリーズを主に手がける独立系製作会社の中でリーダー格の一社とみなされている。メソッド社によるTVシリーズには、マーベル・コミックス原作の「アイアンマン ザ・アドベンチャーズ」(08~12)をはじめ、「Le petit prince (The Little Prince)」(10~13)などがある。

製作 アレクシ・ヴォナール Alexis Vonarb

 1972年生まれ。フランス、ストラスブールのロベール・シューマン大学で民法の修士号を、イギリスのレスター大学で法学修士号を取得した。1995年に、パリの名門国立映画学校フェミスの製作科に入学し、そこでアトン・スマーシュと出会った。

 その後、スマーシュのオニキス・フィルムズに加わり、『ルネッサンス』(06)、3Dアニメ映画『The Prodigies』(11)、『アップサイドダウン 重力の恋人』(12)、そして2015年公開の3Dアニメ映画『Mune, le gardien de la lune』など、15本以上の映画を製作した。

 1998年にスマーシュと、アニメ製作会社メソッド・アニメーションを創立。現在でに20本以上のアニメ・シリーズ(放送枠として200時間以上)を製作し、世界各地で放送され、賞も獲得している。メソッド社によるTVシリーズには、マーベル・コミックス原作の「アイアンマン ザ・アドベンチャーズ」(08~12)をはじめ、「Le petit prince (The Little Prince)」(10~13)、などがある。

音楽 ハンス・ジマー Hans Zimmer

 その長いキャリアにおいて、120本以上の映画を音楽で盛り上げ、その全世界興行収入は総計240億ドル以上。これまでに、『ライオン・キング』(94)で米アカデミー賞作曲賞を受賞したのをはじめ、ゴールデングローブ賞受賞2回、グラミー賞受賞4回、アメリカン・ミュージック・アワード受賞1回、トニー賞受賞1回など、数多くの栄誉に輝いている。また、優れた業績と音楽界への貢献に対し、ASCAP(米作曲家作詞家出版者協会)より2003年に権威あるヘンリー・マンシーニ賞生涯功労賞を授与された。さらに、10年にはハリウッド・ウォーク・オブ・フェイムの星にその名が刻まれ、14年にはチューリッヒ映画祭生涯功労賞を受賞した。14年には、イーブンティム・ハマースミス・アポロでイギリス初のコンサート「Hans Zimmer Revealed」を開催した。

 アニメーション映画では、「マダガスカル」シリーズ(05,08,12)、「カンフー・パンダ」シリーズ(08,11)などの音楽を手がけた。また、クリストファー・ノーラン監督作では「ダークナイト」三部作(05,08,12)や『インセプション』(10)などの音楽を担当し、『インターステラー』(14)の音楽では10回目のオスカー・ノミネートを手にした。

 そのほかに音楽を手がけた主な作品は、『レインマン』(88)、『ドライビングMissデイジー』(89)、『テルマ&ルイーズ』(91)、『クリムゾン・タイド』(95)、『シン・レッド・ライン』(98)、『グラディエーター』『M:I-2』(共に00)、『ハンニバル』『パール・ハーバー』(共に01)、『ティアーズ・オブ・ザ・サン』(03)、「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズ(03,06,07,11)、『スパングリッシュ 太陽の国から来たママのこと』(04)、『ダ・ヴィンチ・コード』(06)、『フロストXニクソン』(08)、ガイ・リッチー監督の「シャーロック・ホームズ」シリーズ(09,11)、ザック・スナイダー監督の『マン・オブ・スティール』(13)、スティーブ・マックイーン監督の『それでも夜は明ける』(13)、ロン・ハワード監督の『ラッシュ/プライドと友情』(13)、『アメージング・スパイダーマン2』(14)など。

音楽 リチャード・ハーヴェイ Richard Harvey

歌曲 カミーユ Camille

製作総指揮 ジンコ・ゴトー Jinko Gotoh

 25年以上、アニメーション業界でプロデューサー、コンサルタントを務めてきた。幅広い媒体で活動し、とくにアニメとCGIの進歩に力を入れてきた。ディズニー・フィーチャー・アニメーションでは、デジタル制作部門ディレクターとして、CGIアニメへの移行を統括し、『ファンタジア2000』(99)、『ダイナソー』(00)、『リロ&スティッチ』『トレジャー・プラネット』(共に02)などの映画でのCGIアニメの活用を監修した。これまでに15本以上の長編アニメの製作に携わり、その中には、アンドリュー・スタントン監督の米アカデミー賞長編アニメ映画賞受賞作『ファインディング・ニモ』(03)での製作補、シェーン・アッカー監督が自身のオスカー・ノミネート短編アニメを長編にした『9<ナイン> ~9番目の奇妙な人形~』(09)での共同製作、オスカー・ノミネート監督のシルヴァン・ショメが手がけてオスカー長編アニメ映画賞にノミネートされた『イリュージョニスト』(10)での共同製作総指揮などがある。

 日本で生まれ、カリフォルニア州で育ち、コロンビア大学で応用数学の学士号、映画の修士号を取得して卒業。電通で広告業界でのキャリアをスタートさせ、CMやラージフォーマット撮影映画を制作した。科学万博(Expo)85用にCGIの活用を開拓したほか、ミュージック・ビデオ監督をTVCMに起用した先駆者のひとりでもある。ウィメン・イン・アニメーションとザ・シンフォニック・ジャズ・オーケストラで理事を務めている。本業以外では、詩人として著作もある。

ストーリー統括/脚本 ボブ・パーシケッティ Bob Persichetti

 『ムーラン』(98)、『ターザン』(99)、『シュレック2』(04)などにストーリー・アーティストとして制作に加わった。また、ドリームワークス・アニメーションでは、『ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!』(05/ストーリーボードを担当し、アニー賞受賞)、『モンスターVSエイリアン』(09)を手がけたのち、『長ぐつをはいたネコ』(11)でストーリー部門を統括した。

キャラクター・デザイン ピーター・デ・セヴ Peter De Seve

 イラストとアニメーションの分野で活躍するアーティスト。30年間にわたって、雑誌、書籍、印刷物とTVの広告、アニメーション映画などさまざまな媒体で活動してきた。そのイラストは雑誌「The New Yorker」の表紙を何度も飾ったほか、世界的に大ヒットした「アイス・エイジ」シリーズ4作のうち、3作(06,09,12)のキャラクター・デザインを手がけたことで知られる。また、『ムーラン』『バグズ・ライフ』(共に98)、『ターザン』(99)、『ファインディング・ニモ』(03)などのアニメ映画も手がけている。これまでに数多く受けた栄誉の中には、イラストレーター協会のハミルトン・キング賞、スペクトラム・アニュアル・オブ・ファンタスティック・アートのゴールドメダル、フランスのフェスティバル・BD・ソリエ=ヴィルのソレイユ・ドール賞、『アイス・エイジ3 ティラノのおとしもの』(09)に対する視覚効果組合賞アニメ・キャラクター・デザイン賞ノミネートなどがある。

美術 ルー・ロマーノ Lou Romano

 アニメーションのさまざまな美術部門で活躍するアーティストであり、声優でもある。クリエイティブ・アンド・パフォーミング・アーツのサンディエゴ校(SCPA)で演技を学んだ。2000年に入社したピクサーで、『Mr.インクレディブル』(04)の美術監督を務め、アニー賞を受賞。これまでにそのアートワークは、ニューヨークのメトロポリタン・オペラのミュージアム・オブ・モダンアート・アンド・ギャラリーで展示され、「ニューヨーカー」誌の表紙を飾った。2009年にピクサーを離れ、オレゴン州ポートランドのライカ社に移籍した。

共同美術 セリーヌ・デルモ Celine Desrumaux

 フランス出身で、監督、アニメーター、美術監督として活躍。フランスの名門CGアニメーション学校シュパンフォコムを卒業後、ロンドンに渡り、ザ・カートゥーン・ネットワーク、アードマン・アニメーションズ(2005年『ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!』)、フレームストア(10年『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART 1』)などの会社で長編映画、CMなどの制作に携わった。10年にパッション・ピクチャーズに監督として加わり、11年に短編映画『Countdown』を監督。同作は世界各地の映画祭で上映され、いくつもの賞に輝いた。

CGキャラクター監修 四角英孝 Hidetaka (Hide) Yosumi

 アニメ『Valiant』(05)でソフトウェア・エンジニアを務め、映画界でのキャリアをスタートさせた。その後、移籍したディズニーで、『ボルト』(08)のキャラクター・テクニカル監督を担当。その才能と可能性に素早く気づいたディズニー上層部より、『塔の上のラプンツェル』(10)の主人公ラプンツェルの非常に複雑な髪の毛を監修する役割を任せられた。それは同業者たちからは不可能だと考えられていた仕事だった。その出来ばえは今でも驚異的な技術による偉業であり、ユニークなアニメーションの成功事例だと見なされている。そのほかに手がけた作品には『シュガー・ラッシュ』(12)などがある。

CGアニメーション監修 ジェイソン・ブース Jason Boose

 『ムーラン』(98)、『ターザン』(99)のアニメーション・チームに加わり、その後、『リロ&スティッチ』(02)でアニメーターを務めた。ピクサーでは、『カーズ』(06)、『レミーのおいしいレストラン』(07)、『ウォーリー』(08)でアニメーターを務めた。国際的にヒットした『カールじいさんの空飛ぶ家』(09)では、主人公の老人のアニメーション―非常に複雑で技術的なハードルの高い作業―を担当した。

CG撮影 クリス・キャップ Kris Kapp

CG照明監修 アデル・アバダ Adel Abada

 実写とアニメが合成されるシークエンスのある映画数本で照明を担当。『アバター』(09)では照明技術監督を務め、ピクサーの『カーズ2』(11)、ソニーの『モンスター・ホテル』(12)など、野心的な長編アニメ映画でも照明技術監督として作品の成功に貢献した。

ストップモーション・クリエイティブ監督 ジェイミー・カリリ Jamie Caliri

 映像を通したストーリーテリングに情熱を傾ける監督。近年に手がけたアニメ映画は、エミー賞を1回、アニー賞を3回など、多くの栄誉を受けている。

 アニメと実写の両方をこなし、ミュージック・ビデオ、CM、タイトル・シークエンスを手がけてきた。最近では長編作品を中心に仕事をし、過去10年間は、紙を使ってさまざまな手法を試し、クリエイティブで斬新なプロジェクトを練ってきた。

 クリエイティブ・ディレクターを務めているドラゴンフレーム・ソフトウェアは、放送番組や長編アニメの撮影に使われる画期的なツールで、ライカ・エンターテイメント製作の『コララインとボタンの魔女 3D』(09)、『パラノーマン ブライス・ホローの謎』(12)、『The Boxtrolls』(14)、ディズニー製作のティム・バートン作品『フランケンウィニー』(12)、アードマン・アニメーションズ製作の「ウォレスとグルミット」シリーズ、「ひつじのショーン」シリーズなどで使われている。

ストップモーション美術/キャラクター・デザイン アレックス・ユーハス Alex Juhasz

 米ニュージャージー州エリザベスで育ち、父の影響でイラストレーターを目指した。2005年にニューヨークのスクール・オブ・ビジュアル・アーツでイラストを学び、芸術学士号を取得。07年に、アニメーション界でのキャリアを追求するために南カリフォルニアへ移り、ジェイミー・カリリ監督と仕事を始めた。それ以来、ふたりは力を合わせ、独特な美意識を練り上げ、多くの作品で名実ともに成功を収めてきた。共同で手がけた作品には、ユナイテッド航空のCM「Dragon」(06)と「Heart」(08)、“ザ・シンズ”の「ザ・ライフルズ・スパイラル」のミュージック・ビデオ(12)、TVシリーズ「ユナイテッド・ステイツ・オブ・タラ」(09~11)のタイトル・シークエンスなどがある。

ストップモーション・アニメーション主任アンソニー・スコット Anthony Scott

 ストップモーション・アニメーションを手がけた最初のアニメーターのひとりであり、キャリアを通して、ストップ・モーション・アニメに情熱を捧げてきた。その輝かしい業績は、『バグズ・ライフ』(98)、『トイ・ストーリー2』(99)のCGIアニメ、そしてハイブリッドCGIとストップ・モーション作品にまたがる。キャリア初期にディズニー製作の『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』(93)で組んだティム・バートンとは、その後も長く、コラボレーションを続けており、『ティム・バートンのコープスブライド』(05)ではアニメーション・チームを仕切った。また、ライカ・エンターテイメント製作の『コララインとボタンの魔女 3D』(09)と『パラノーマン ブライス・ホローの謎』(12)では、主要アニメーターのひとりにクレジットされた。

編集 マシュー・ランドン Matthew Landon

 インディペンデント映画、ジャンル映画、さらに大作映画まで、幅広い作品を手がけてきた。ワインスタイン・カンパニーに数年在籍し、『ピラニア 3D』(10)、『スクリーム4:ネクスト・ジェネレーション』『スパイキッズ4D:ワールドタイム・ミッション』『マリリン 7日間の恋』(いずれも11)の製作にかかわった。

編集 キャロル・クラヴェッツ Carole Kravetz

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松任谷由実「気づかず過ぎた初恋」

作詞・作曲/松任谷由実 編曲/松任谷正隆

各主要サイトにて11/18 より配信スタート。

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11/18(水)00:00配信スタート!
※11/18(水)AM0:00?有効となりますので予めご注意ください。

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名作小説の映画化の難しさ

 アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリの名作を現代的なアニメーション映画にするという壮大なプロジェクトが始まったのは8年以上前。製作を務めるフランス人のアトン・スマーシュ、ディミトリー・ラッサム、アレクシ・ヴォナールが、アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリエステート(権利管理者)代表オリビエ・ダゲイから、ゴーサインをもらったときだった。

 「私たちは、時代を超えて世界中の多くの人々に愛されているこの小説を台なしにしてはいけないという、とてつもなく大きな責任を感じた」とスマーシュは語る。「この本を読んだ誰もが、王子さまと彼の世界について自分だけのイメージをもっているので、小説をそのまま映画化することはできないと思ったんだ。私の場合、学校に通い始める前から、父がこの本を読んでくれた。誰もが強い個人的なつながりをもっている本なんだよ。だから、この小説に取り組むうえで新しいアプローチを思いつくことができるような監督を見つけることがとても重要だった」

 同じく製作のラッサムはこう指摘する。「あまりにも有名で、世界中で愛されている小説なので、それに対して深い敬意を払いつつも、娯楽性の高い、大胆なビジョンをもたらすことができる監督でなければと思った。監督だけでなく、クリエイティブ・チームは原作の根本的な部分を大切にしながら、それに縛られていると窮屈に感じずに仕事ができることが重要だったんだよ」
スマーシュとラッサムはふたりとも、アメリカ人監督マーク・オズボーンが本作のメガホンをとることを引き受けたときは、金鉱を掘り当てた気分だった。「最初、マークは考えることさえとんでもないと言っていたんだ。あまりにも大変な作品だからだよ。でも、私たちは彼ならすばらしい作品にしてくれるとわかっていた」とスマーシュは言う。「彼はすでにドリームワークスの『カンフー・パンダ』を監督していたからね。あの作品の主役は、中国のとても重要な文化的要素が2つ―カンフーとパンダ―だったが、中国では文句なしに愛され、賞賛された。彼はあの映画のあのテーマを、単にコミカルに描くのでなく、とても真面目に扱う方法を見つけていた。そしてこの映画に関しては、彼は考えてみると言ってくれて、時間をかけてじっくり検討してくれた。そして6か月後に、私たちを圧倒させるアイデアをもってきたんだ」

 プロデューサーたちによれば、オズボーンは、もともとの題材を新たなストーリーで包み込み、それによって観客が飛行士の隣に住む女の子の視点を通して「星の王子さま」を再訪できるようにした。「マークが監督で私たちはじつに幸運だった。彼は、明確なビジョンで作品を引っ張っていける才能豊かな監督なんだよ」とスマーシュは言う。「ストップモーション・アニメーションを使って、王子さまのストーリーを描けることになって、この映画にもうひとつのすばらしい層が加わった。サン=テグジュペリのなじみ深い挿絵に、リアルで、はっきりした形で生命が宿ったんだ」

 「映画の始めのほうで、女の子が初めて飛行士の本を見つけるのだが、観客はそれを彼女の目を通したストップモーションアニメーションの世界として観る。それはとても感動的な瞬間なんだよ」とスマーシュは説明する。「女の子のCGアニメーションの世界と、王子のストップモーションアニメーションの世界の間にはっきりとしたつながりが感じとれるんだ。原作に対するすばらしいトリビュートになっている」

 「マークは何よりもまず、すばらしい映画を作ることを目標にした。でも、もちろんこの小説とそのメッセージは、どちらも彼が心の中でとても大切にしていたものだったんだ」とラッサムは言う。「私はすでに映画を何度も観ているが、毎回泣ける。3歳の娘をもつ父親として、この映画は私の心にとても響くんだよ。ちょうど、私が幼いころに両親があの本を読んでくれたときのように。『星の王子さま』は、そのすばらしい物語で家族の心を結びつける。私はそれがこの映画の中心にあると信じている」

監督による完璧な映画化アイデア

 マーク・オズボーンは、エージェントからこのプロジェクトについて初めて聞かされた日のことをこう思い返す。「あれは2009年だった。僕のエージェントが、『星の王子さま』という小説を知っているかと聞いてきたんだ。2人のフランス人プロデューサーが、あの本を基に大作アニメーション映画を作りたがっているからと。僕はあの小説をよく知っていた。だからこそ、僕の最初の直感は断れというものだった。そのままの映画化なんて、できっこないと思ったからね。そして、それについてもっと考えてみると、パスするには題材としてすばらしすぎると気づいたんだ。この本のテーマはとても豊かで、すごく共感を呼ぶ。それを出発点としてストーリーを組み立てるなんて、一生に一度のチャンスだった。しかも、映画によって、この小説を守ることができるという機会は、とにかくパスできないと思ったんだよ。それで、原作のストーリーの周囲に新たなストーリーを組み立てることによって、原作自体を膨らませるのではなく、それをそのまま守ってはどうかと提案したところ、それをサン=テグジュペリ エステートが受け入れてくれたので、僕はすごくうれしかった」

 オズボーンは、何年も前、今の妻とまだ恋人同士だったころに、彼女から「星の王子さま」の本を渡され、個人的に深く影響されたと明かす。当時、ふたりは大学生で、長距離恋愛をうまく続けていこうとしていた。「『星の王子さま』が離れかけていた僕らを再び結びつけてくれた」と彼は認める。「映画化に際し、僕はこの小説にすごく注意を払ったよ。僕にとっても、そして読んだことがある誰にとっても、この小説はとても深い意味がある。人生において重要な関係と友情のことを真剣に考えさせてくれるからだ」

 監督は、解くべき難問としてこの映画にアプローチしたそうだ。「大きな問題は、あの本を読んで味わうとても深い感情面での体験に匹敵するような映画体験を、どうすれば作れるのかということだった」と彼は言う。「製作のディミトリー・ラッサムとランチをしたときに、僕の究極の夢のシナリオを提案して、どこまでやれるかを試したんだ。それには、CGアニメーションをストップモーションアニメーションと組み合わせるという大胆なアイデアが含まれていた。年老いた風変わりな飛行士と、彼の隣に越してきた女の子の間に生まれる感動的な関係を掘り下げたいというのが、僕の大それたアイデアだったんだ。僕はこの映画が最終的には、友に別れを告げることを学ぶ少女のストーリーになる必要があると感じた。それは原作の展開としっかり並行することになる。それはこの非常に繊細な題材へのアプローチとして適切だと思えた。でも正直なところ、そういうアイデアが全部通るとは夢にも思っていなかったよ」

 幸いにも、サン=テグジュペリ・エステートも、本作のプロデューサーたちも監督の熱のこもったアイデアを大いに気に入った。2010年10月、オズボーンはアーティストと脚本家から成る少数精鋭チームをロサンゼルスに集めてアイデアを出し合い、コンセプトアートと脚本初稿を創った。その後、オズボーンは家族とともにパリへ移り住み、本作のプリプロダクションを本格的に開始。そして、ストーリーボード・アーティスト、ルック・デベロップメント(物体の見た目や質感を決めること。通称“ルック・デブ”)・アーティスト、キャラクター・デザイナー、制作パイプライン(CGアニメーション映画を制作するために、さまざまな作業工程を融合させるシステム)・エキスパートのチームが結成され、夢の映画実現へのプロセスが始まった。

 この時期、オズボーンは、ボイス・キャスト候補の俳優たちや、制作に参加するアーティストに対してだけでなく、世界中の配給会社に対しても本作を売り込んでいたそうだ。彼はその際、本作のトーンと情熱を伝えるために特別に用意したハンドメイドの視覚グッズがいっぱい詰まった“魔法のスーツケース”を使った。「過去4年間で、僕がこの映画の売り込みをしたのは400回近いんじゃないかな」と彼は思い返す。「ジョー・シュミットという、才能豊かなモデルメーカー(模型制作者)が作ってくれたそのスーツケースには、アートブックが入っていて、映画のストーリーを視覚的に伝えることができた。それを見た人々は、僕たちがいかに原作小説に敬意を払いつつ、それを守れるように新しいストーリーで包み込んだのかを知って驚いていた。その様子を見るのはとてもいい気分だったよ。この映画にかかわった誰もが、このストーリーを語るために多くのリスクを背負ってくれた。僕たちにとって、それはほんとうに充実した製作プロセスだったよ」

 結局のところ、ストーリーを小説のページからスクリーン上へ移す旅にとって、通常とは異なる製作プロセスはプラスに働いた。オズボーン率いる少人数のチームがロサンゼルスで始動させたこのプロジェクトは、その後、準備とストーリーボード作成の段階でパリに移動した。アニメーション、制作、照明の最終段階では、チームはカナダのモントリオールに拠点を移した。フランス/カナダ合同プロジェクトとして税制上の優遇を受けるためだ(本作は、パリのオニキス・エンターテイメントと、モントリオールのミクロスの共同事業)。

 「社内スタッフのみで構成されたドリームワークスでのアニメーション映画作りとはかなり違う」とオズボーンは説明する。「この映画では、全員を外部から雇い、僕ら独自のインディペンデント制作会社を立ち上げ、必要に応じて独自のアニメーション・パイプラインを創り上げた。そのおかげで、既存のいかなる構造にも縛られずに済むので、自由に試せるすばらしいチャンスを得たんだ。マイナス面は、いわば、電車が走っている間に線路を作っているようなものだったので、それがかなり怖かったのは確かだね」

 オズボーンの製作パートナー、ジンコ・ゴトー(『ファンタジア 2000』『ファインディング・ニモ 3D』『9<ナイン> ~9番目の奇妙な人形~』『イリュージョニスト』)は、オズボーンのアプローチによって、長年の原作のファンと同じくらい一般の映画ファンも共感できる作品になると確信している。「私はこの映画は、熱狂的なアニメ・ファンだけでなく、映画ファンを広く惹きつけるんじゃないかと期待しているの。原作のファンは、私たちがそれをきちんと守っていることをわかってくれるでしょう。もし本を読んだことがなければ、この映画によって、それがどれほど特別な小説なのかが理解できるはず。CGとストップモーションの組み合わせにより、これまでのどんなアニメーション映画でも観たことがないほど、視覚的なストーリテリングに奥行きが出ているの」

理想のボイスキャストが勢ぞろい

 監督の思い入れたっぷりの売り込みと、サン=テグジュペリの世界的な人気を誇る小説のおかげで、第一線の俳優たちが本作のキャラクターたちにぴったりの声を提供してくれることになった。

 オスカー受賞俳優ジェフ・ブリッジスは、飛行士役にたちまち惹きつけられたそうだ。「マークのプレゼンテーションはすばらしかった。すごいスーツケースを持参し、この映画で何を描くことになるのかを具体的に見せてくれたんだ」と彼は思い返す。「そのときに彼も私も、同じことを心配していることがわかった。もし、この映画であの伝説的なキャラクターたちを小説と同じように動かすだけだったら、原作のよさを充分に生かしていないことになるかもしれない。でも、マークが考えていたもうひとつのすてきなストーリーによって、小説はほとんど映画の中でひとつのキャラクターのような扱いになっていた。それはこの名作に対するすばらしいトリビュートなので、私はこの作品に喜んで加わりたいと思ったんだよ」

 ブリッジスは、彼にとって飛行士というキャラクターはとても大切なものになったと語る。「私は子供のころにあの本を読んだ」と彼は言う。「挿絵ははっきり思い出せるよ。ヘビに飲み込まれる帽子というか象というか、あの絵はとくにね。私は飛行士ほどの年ではないので、声を少し老けさせなければならなかったが、飛行士にはとても共感できた。飛行士と女の子は一緒にすばらしい時間を過ごすんだ。私自身にも娘が3人いるので、飛行士と心を通じ合わせやすかった」

 「この小説の中には、ずっと心に残る一節がある」と彼は言う。「キツネが王子さまにこう言うんだ。『心で見ないと正しいことはわからない。大切なものは目に見えないんだよ』。そのシーンでキツネは心について語っており、それがこのストーリー全体のメッセージなんだ」

 飛行士の隣に住む女の子という重要な役の声を演じるのは、才能豊かな若き女優マッケンジー・フォイ(『アーネストとセレスティーヌ』『トワイライト・サーガ/ブレイキング・ドーンPart 2』『インターステラー』)である。「この小説は何年か前に学校で読んで、とても面白かった」とフォイは言う。「だから、この映画のことを聞いたとき、すぐにやりたいと思ったの。私が演じるキャラクターはとても頭がよくて、優しくて、ちょっと風変わりで、ものすごく生真面目なタイプなの。彼女とお母さんは新しい町に引っ越してきたばかりで、お母さんからのプレッシャーがとても大きいのよ。彼女は新しい学校でもいい成績をとることを期待されているの。まだ9歳ぐらいなのに、年のわりにすごく大人っぽい。そんな彼女が、飛行士と友情を築くことによって、また子供に戻っていいんだということを教わる。飛行士が彼女から離れなくて済むように、彼女は王子さまを捜しにいくの」

 若いながらも、フォイはこのストーリーの心と、本作で称えようとしている価値観を理解している。「小説も映画も、子供時代にしか味わえない面白いことを楽しみ、早く大人になりすぎないことが大事だと教えてくれているんじゃないかな。それから、もし誰かを愛しているなら、その人はずっと心の中で生き続けるものだということも教えてくれる。ちょうどキツネが王子さまに言うみたいに。この映画には、どんな人にもためになることがあるのよ。おじいちゃん、おばあちゃんでも、パパやママでも、子供たちでも関係ない。この映画にはすばらしいメッセージがあり、映像もステキなので、誰もが楽しんで観られると思う」

 本作の女の子役には、いろいろなことがあっても、うんざりせず、好奇心をもち続ける資質が必要だった。オズボーンによれば、フォイはそれをしっかり自分のものにしているそうだ。「この映画の子供たちには、とても純真で誠実な声質が欲しかった。子役というのは、演じすぎることがあるからね。本格的な制作に入る前に、僕の娘のマディーと息子のライリーに、女の子と王子の声を仮に演じてもらったんだ。その後、娘は成長して声も変わり始めたので、女の子役にマッケンジーを起用できたのはほんとうに幸運だった。でも王子役には息子のライリーよりふさわしい声はひとりも見つけられなかった。当時、ライリーは11歳で、王子役にとても自然な声だったので、そのまま正式に起用したんだ」

 複雑な声の演技を求められるお母さん役にフィルムメーカーたちがアプローチしたのは、人気女優レイチェル・マクアダムス(『きみに読む物語』『シャーロック・ホームズ』『アバウト・タイム ~愛おしい時間について~』)だった。マクアダムスは、カナダで育った少女時代に、「星の王子さま」に基づくTVアニメーション・シリーズを見ていたそうだ。「本を読んだのは20代のときだった」と彼女は語る。「友達からプレゼントにもらって読んだんだけど、とても深く感じる部分が多かったわ。このサン=テグジュペリの小説は、人生のいろいろな段階で異なるメッセージを伝えてくるんじゃないかな」

 本作はマクアダムスにとって、声の出演をした初アニメーション作品だ。マクアダムスはお母さん役を演じるにあたり、あれこれ考えすぎずに、このストーリーにしっかりと心を通じ合わせることが大事だったと言う。「私が演じるお母さんは働くシングルマザー。彼女は、娘のために、長期間にわたってとても細かい人生プランとルールを立てていて、娘には例外なくそのとおりに生きてほしい。少し神経過敏だけど、善意の人ではあるのよ。彼女と娘は完璧なチームなんだけど、やがて女の子のほうが母親から離れ始めるの」
マクアダムスは、感情描写の強さと、原作に対するとても深いオマージュが、本作の非常に大きな財産だと思っている。「この映画は、人生のさまざまな謎をすばらしい形で称えているわ。人間って大人になると、あらゆる疑問に対する答えを必要としてしまいがちよね。この映画では、原作と同じように、すべてを理解する必要は必ずしもないということ、人生という旅と人間関係を楽しむ大切さを訴えている。そして、それはすべて、原作の有名な一節――『大切なものは目に見えない』――に集約されているのよ」

アニメーション界のドリームチーム

 本作の制作面で際立つ要素のひとつは、ヨーロッパのアニメーション界で超一流の人材と、ロサンゼルスの大手アニメーション・スタジオの才能豊かなベテランの両方を惹きつけたという点だ。ストーリー統括/脚本のボブ・パーシケッティはこれまでに、ディズニーでは『ノートルダムの鐘』『ムーラン』『ターザン』などを、ドリームワークスでは、『シュレック2』『モンスターVSエイリアン』『長ぐつをはいたネコ』などを手がけてきた。彼は、2012年初頭にオズボーンから電話で本作に誘われた日のことをよく覚えている。「ドリームワークス時代からマークを知ってはいたけれど、同じ映画で組んだことは一度もなかったので、僕は少数精鋭のストーリーボード・アーティストたちと一緒に、この映画のストーリーをマークと練るチャンスに飛びついたんだ」

 パーシケッティによれば、監督のマーク・オズボーン、脚本のイリーナ・ブリヌル(『I Capture the Castle』『The Boxtrolls』)とのクリエイティブ面に関するミーティングは、主要キャラクターたちを見極め、それぞれの何がユニークで、何が特別なのかを具体的にしていくうえでとても役立ったそうだ。「それがこのプロセスのすばらしい点なんだよ」と彼は説明する。「最初の脚本が書かれた段階では、個々のキャラクターはまだ粗削りなダイヤの原石のようなものだ。だからそれを練っては磨き、練っては磨き……という作業を繰り返すたびに、一人ひとりのよりはっきりした姿が見えてくる。そうやって観客が一緒に旅を楽しんでくれるようなすばらしいキャラクターたちを創り出しながら、ストーリーをとても効率よく進めることができる。その結果、映画にとっての最高の脚本になるんだよ」

 イギリス人脚本家のブリヌルは「この映画のための脚本を監督のマークと練るプロセスは、とても充実したコラボレーションだった」と言う。「彼はとても話しやすい人で、さまざまなアイデアを自由に言える雰囲気を創ってくれるの。たとえアイデア自体がひどいものでも、何らかの解決につながることもある。ロサンゼルスでアニメーション制作のアーティストたちと会ったとき、クリエイティブ面のアイデアが突然、いろいろな人からたくさん出てきたの。そういうのはものすごく役に立つ可能性がある。そして、それらのアイデアの中から最初の脚本を改善できると思えたものをいくつか採り入れることができたのよ」

 「少女のころ、うちには『星の王子さま』が一冊あったので、あの本の雰囲気や挿絵をかなり鮮明に覚えているの」と語るブリヌルは、オスカー受賞作品『恋におちたシェイクスピア』の脚本にも関わった。「『星の王子さま』の挿絵は私たちの第一のインスピレーション源だった。そして、原作には主要なテーマがふたつあり、それらがとくにパワフルだった。ひとつは、『大切なものは目に見えない』というメッセージで、もうひとつは、大人になってもいかに子供の心をもち続けるかということよ。私たちは、一冊の本がひとりの子供にどのように大きな影響を与えるかを、キャラクターのひとりを通して描くのはいいアイデアだと気づいたの。それが私たちの出発点だった。そして、アーティストたちの手によるアートワークができてくるようになると、それは私たちがストーリーを練るのにとても役立ったわ」

 本作のユニークな雰囲気と美術を創り出した主要アーティストのひとりは、ピクサーの『Mr. インクレディブル』『カールじいさんの空飛ぶ家』を手がけたことで知られるルー・ロマーノだ。彼は、本作に加わった理由を、原作の魅力に加えて、マーク・オズボーンと組めることがうれしかったからだと言う。ロマーノとオズボーンは、カリフォルニア芸術大学(通称“カルアーツ”)でクラスメートであり、学生時代に短編映画を何作か一緒に制作した。「僕はマークと組むのが大好きだし、彼が説明してくれたストーリーにとても興味をもった」とロマーノは言う。「僕がこの作品に加わったとき、すでに充分な数のデザインができていたんだ。それでマークが僕に頼んだのは、それらすべてをまとめ、しかも、僕自身のアイデアを盛り込む方法を見つけることだった」

 本作の美術監督として、ロマーノは、ストップモーションとCGの両方において、デザイン、照明、色彩の点で、映画の視覚的な雰囲気の確立に協力した。「最初から原作というしっかりした枠組みがあったので、そこに映画としての照明や雰囲気を詰めていくのは、ゼロから始めるよりもやりやすかった」と彼は語る。

 脚本を練るプロセスで、ストーリーはつねに進化していたが、ロマーノによれば、キャラクターそれぞれの世界のトーンがどうあるべきかについて、オズボーンは最初から明確にしていたそうだ。「飛行士の世界は暖かく、魔法のような魅力のある場所で、一方、女の子の世界は頑なで冷たく、より秩序正しい場所。僕がデザインするうえでいつも大事なのは、それを通して観客のどんな感情や感傷を引き起こしたいかという点なんだ」

 ロマーノによれば、フィルムメーカーたちは小説「星の王子さま」に加え、フランス人の名匠ジャック・タチの『ぼくの伯父さん』『プレイタイム』といった映画も参考にしたそうだ。「それらの映画には、大人の世界をからかっているような、一種の風刺がある」とロマーノは考えながら言う。「タチはとても視覚的なストーリーテラーだったので、映画を観れば彼の思考がすぐに理解できるんだ。僕たちはまた、過去のストップモーション映画の傑作をたくさん観た。また、1950年代、60年代の近代的なデザインの影響が、このストーリーの現実の世界と、大人だけで構成されている惑星において見てとれる。どちらも、同じような種類の近代的な合理化と、単純な表面的な美しさがある。それとは対照的に、飛行士の世界は平坦ではなく、気まぐれな雰囲気がある」

 共同美術のセリーヌ・デルモ(『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART 1』『Asterix: Le domaine des dieux』)は、CGとストップ・モーションの組み合わせによって、本作には、単純さ、美しい映像、そしてある種の素朴で子供らしい魅力が見事に混在するようになったと考える。「私は、原作の挿絵に最大限の敬意を払いたかったの」と彼女は言う。「これまで『星の王子さま』に基づいて創られた作品では、イラストのほとんどが、青い空と濃い青の背景で描かれているので、私は、『原作から受ける視覚的な印象を大切にしながらも、この映画でどうすればこれまでの作品と一線を画することができるかしら?』と考えたのよ。そしてまた原作のことを考えたら、最初に頭に浮かんだ色は白だったの。すべての絵が描かれている白いページ、黄色い星が点在する白い宇宙、白い背景にウォーターカラー・エフェクト(水彩画のように見せる手法)……。白と黄色は、私にとっても、制作チーム全員にとっても、大きな意味があるのよ。それは原作の挿絵を象徴するものだから。紙の色、砂丘の色、太陽、星たち。そのすべてを私たちは使いたかった。そして何よりも、それは“私たちの”色であり、“私たちの”映画の色だったから」

 キャラクター・デザイナーとして名声を博しているピーター・デ・セヴにとって、本作は、十代のころに読んだ本をじっくり読み直すとてもいい機会だった。「昔読んだときは、ちゃんと理解していなかったと思うけど、今回はとても感動したよ。監督のマークからこの件で初めて電話をもらったとき、白状すると、僕はちょっと怖気づいたんだ。なにしろ、世界中の何百万もの人々の心にすでに刻み込まれたキャラクターたちを造形し直せと頼まれたんだからね。でも、マークの説明にとても興味を惹かれたし、彼はこの映画化にすごく情熱的だったので、きっと原作のよさを充分に生かせると思えた」

 「アイス・エイジ」シリーズの人気キャラクターたちのデザインで有名なデ・セヴは、ディズニーの『ノートルダムの鐘』『ターザン』、ドリームワークスの『プリンス・オブ・エジプト』、ピクサーの『バグズ・ライフ』『ファインディング・ニモ 3D』など、メジャー・スタジオの大作アニメーション映画も手がけてきた。彼は、「星の王子さま」の本で、キャラクターたちはほとんど子供っぽく見えるような手法で、とてもシンプルに描かれていると語る。「あの挿絵からはいろいろな解釈をすることができたが、肝心なのは、サン=テグジュペリの絵の本質を僕がどれだけ具体的に捉えられるか、という点だった」

 星の王子のキャラクター・デザインを決めるうえで、デ・セヴは、オズボーンに多くの選択肢を与えるために、できるだけたくさんのデザインを考えた。「デザインを考えるのがいちばん難しいキャラクターというのは、主役であることが多い」と彼は説明する。「とくにこの映画の場合、王子が誰で、どんな外見か、誰もが知っているからね。僕は、20から30点ぐらいの絵を描き、スカイプで打ち合わせをする前にマークに送ったんだ。彼は、王子の顔、体のバランス、衣装などのいろいろな側面を指摘し、僕らが望む構成要素に近づけるまで練った。僕は以前から、王子にはちょっと悲しげで、厭世的な雰囲気があると気づいていた。それは、子供が主役のアニメーション映画ではふつう見られない要素なんだよ。だから僕が描いた彼の絵の多くは、ちょっとばかりメランコリックな感じがするんだが、同時に、王子さまには好奇心旺盛なところや、魔法にかけられたような魅力もある。また、彼はささいな物事に美しさを見いだす人でもある。僕は彼を描くときに、そういう微妙な要素を盛り込もうと努力したんだ」

 本作でアニメーション監修を務めたジェイソン・ブースは、本作の大きなチャレンジのひとつが、ある種のヨーロッパ特有の詩的な繊細さを、ストーリー展開の美観としてはより伝統的な要素と組み合わせることだったと語る。「これは親密なつながりを描いた映画だ」と言うブースは、これまでに、ディズニーの『リロ&スティッチ』、ピクサーの『カーズ』『レミーのおいしいレストラン』『カールじいさんの空飛ぶ家』などを手がけたアニメーターだ。「親密さがあふれる映画として、老いた飛行士と女の子の関係にしっかり説得力をもたせる必要があったんだ。スクリーン上でふたりが絆をもち、ゆっくりと友情を育んでいく様子を描くことが、重要なチャレンジだった」

 ブースは、本作はアニメーション映画は必ずしも一定の型にはまる必要はないという証拠だと指摘する。「アニメーションだからといって型どおりである必要も、単純明快である必要もない」と彼は言う。「詩的で意味深くても、(従来のアニメ映画に対してのように)観客がキャラクターたちやストーリーに熱中するアニメーション映画になりうるということだよ。僕たちはこの作品で、アニメーション映画はこうあるべきだという定義の枠を超えることによって、アニメーションというフォーマットで表現できる可能性は無限にあることを証明できればと思っている」

ディズニースタジオから参加した日本人クリエイター四角英孝

 本作でCGキャラクター監修を務める四角英孝は、ディズニーの『ボルト』『塔の上のラプンツェル』『シュガー・ラッシュ』などの長編アニメーション映画でテクニカル・ディレクターを務めてきた。今回、四角が率いるチームは、本作のための新しいリグづけ(キャラクターなど3Dモデルを動かすための加工をする工程)システムを開発した。「僕たちは、3Dでのデザインとキャラクターに細心の注意を払っていたので、この壊れにくく、かつ柔軟なリグづけシステムを創ったんだ」と彼は説明する。「監督がキャラクターたちを発展させるたびに、多くの時間を費やさずに済むようにしようというのが僕たちの目標だった。つまり、キャラクターの3Dモデルに変更が出たら、その1時間後には、それを制作パイプラインに戻せるようにしたかったんだよ」

 四角によれば、CGチームにとって主なチャレンジは、原作で世の中に紹介された2Dの世界に、さらなる次元を加えることだったそうだ。「僕たちは、サン=テグジュペリが創った2D世界を3DのCG世界へ変換したわけで、そのふたつの世界はすべてが違う。2Dであるキャラクターを創ると、そのキャラクターの360度の姿が必要になるので、つねにあらゆる角度からの姿を確認しつつ、大スクリーン上でそのキャラクターが確実に見ばえするようにしなければならなかった。映画には独自の描写、ストーリーの伝え方があるが、原作小説の世界と強いつながりが必要だった。また、映画のストップモーション部分と、CG部分の間のつながりも考えなければならなかった。写実的すぎず、かといって、マンガ的になりすぎず、その中間のどこか―初めて観る人々にとって、充分に説得力のある世界―である必要があったんだ」

ストップモーションの世界へようこそ

 本作のストップモーション・シークエンスを創るチームを選ぶ段階で、監督のマーク・オズボーンはジェイミー・カリリの才能に委ねることに決めた。カリリは、賞も獲得したユナイテッド航空のCM「Dragon」でよく知られ、映画『レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語』やTVシリーズ「ユナイテッド・ステイツ・オブ・タラ」のタイトル・シークエンスも手がけている。

 「僕はマークの作品が大好きだし、彼を学生時代から知っているので、この映画で彼がストップモーション・アニメーションを使いたがっていると知ったとき、興味があるとすぐに伝えた」と語るカリリは、世界中のTV/映画用のストップモーション・アニメーション制作ソフトとして使われている“ドラゴンフレーム”のクリエイティブ監督でもある。「僕たちは幸運にも、アレックス・ユーハス(「ユナイテッド・ステイツ・オブ・タラ」『The Babadook』)に参加してもらえた。優れた審美眼と、胸がわくわくするような作画スタイルをもつ彼が、制作の初期段階からコンセプト・スケッチに取り組んでくれたんだ。僕たちはカリフォルニア州オーハイで、彼のイラストに基づいて模型をいくつか創り、写真を撮ってマークに送った。僕たちは、この題材のシンプルな美しさに集中したかったので、古風で静かなスタイルで撮影するアプローチをとったんだ」

 カリリ、ユーハス、そしてストップモーション・アニメーション主任のアンソニー・スコットは、飛行士の本のページを通して見えてくる世界を構築するために、監督のマーク・オズボーンと密に連携をとった。「僕たちは、その世界を描く媒体として紙を選んだ。それは、マークがこのストーリーを王子さま中心に構築していたからだ……老いた飛行士があの長い年月、大事にしてきたルーズリーフの何枚ものページで。それは、原作のストーリーへの明らかなつながりだ。だから、僕たちは、冒頭では完全に紙でできているシークエンスから始めて、その後、より奥行きが出てくるにつれ、紙とクレイ(粘土)を組み合わせることによって、キャラクターの顔にウォーターカラーを乗せることができると考えた。僕たちはそれをすべて大げさな形で創るんだが、セットの照明は自然な形にした」

 そう語るカリリが本作でお気に入りのシーンのひとつは、初期に制作したシークエンスだそうだ。「最初に手がけたシークエンスの中で、僕たちはこの紙の世界を女の子の目を通して紹介する」と彼は説明する。「女の子が想像するなか、CGシークエンスから、ストップモーションの紙の世界に移行する。女の子が持つ紙は、雲に似ている紙のトンネルの中に入っていき、それはその後、砂丘に変わるんだ。このシークエンスは、3Dのスペースの上、基本的には作業台の上に置かれた彩色されたシンプルな紙を使って作った」

 本作でストップモーション・アニメーション主任を務めたアンソニー・スコットは、パペットとセットを紙で作るという選択によって、それらのシークエンスが際立つものになったと確信している。具体的な困難に関して、彼は王子さまのキャラクターを捉える複雑さに言及する。「アニメーション制作そのものに関して、僕が最初に考えたことのひとつは、王子さまのスカーフをどうするかということだった」と彼は思い返す。「小説のイラストでは、彼のスカーフはたいてい不思議にも宙に漂っている。まるでつねに風が吹いているかのように。僕は、それについてマークがどう考えているかなと思って、相談した結果、映画では、シークエンスごとに風の強さをレベル分けすることにしたんだ。つまり、風もこの映画ではもうひとつのキャラクターになったというわけ! そして、アニメーターたちはスカーフをどう動かすかを決める基準を手に入れたんだ」

 本作のそれぞれのストップモーション制作にかかった時間は、そのショットの複雑さによって異なる。「キャラクターふたりが、話しながらゆっくり歩くアニメーション制作は、キャラクターひとりが瞬きしたり、振り向いたりするアニメーション制作よりも長い時間がかかる」とスコットは説明する。「だから、この映画では、ひとりのアニメーターが1週間につき、平均5秒から10秒の映像を制作した感じじゃないかな。そのショットの複雑さによって違うけどね」

“内なる子供”を呼び起こす音楽

 『リトルプリンス 星の王子さまと私』にふさわしい音楽を創り出すため、フィルムメーカーたちが協力を求めたのは、『ライオン・キング』の音楽でオスカー受賞のハンス・ジマー。『グラディエーター』『ダークナイト』『インターステラー』などのドラマチックな映画や、『カンフー・パンダ』『マダガスカル2』『怪盗グルーの月泥棒 3D』などのアニメーション映画のサウンドトラックで多くの栄誉に輝いてきた名作曲家だ。

 ドイツ生まれのジマーは、少年時代にアントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ著「星の王子さま」に夢中になったと語る。監督のマーク・オズボーンが(例のさまざまな小道具入りのスーツケースを使って)ジマーに映画版のプレゼンテーションをおこなったとき、ジマーはたちまち感動して涙を浮かべた。「私はかなりタフな人間なんだよ。『ダークナイト』や『インセプション』などのタフな映画の音楽で知られているような。そんな私が、どんな映画になるのか、マークの説明を聞いているうちに、いつの間にか泣いていたんだ。思わず、『ちょっと待てよ、自分がこんなふうになるなんてありえない』と思った。それほど感動的なストーリーだったので、私はどうしても曲を創りたくなったんだ」

 オズボーンは、ジマーと彼のコラボレーターたちが、彼らの音楽と名作に基づくこの映画をどのようにして完璧な組み合わせに仕上げていったかということに感嘆させられたと言う。「ハンスには、ある明確なフランス的資質をこの音楽に盛り込むというすばらしいアイデアがあり、僕たちにカミーユ(・ダルメ)というフランス人シンガー・ソングライターの歌を紹介してくれたんだ」と言うオズボーンはこう続ける。「ハンスはまた、長年のコラボレーターのひとり、リチャード・ハーヴェイとともに、この映画のためにとてもユニークなサウンドを考え出してくれた。ハンスは、そのすばらしい共同作業のプロセスを『バンドをまとめるようなもの』だと言っていたよ。彼らが創り出した音楽は、感動的であり、この映画にはぴったりだった」

 今回の経験を振り返り、ジマーは、数多くの優れたミュージシャンたちと組めたことを心から楽しんだと語る。その最たるものが、フランスでは“カミーユ”として知られるカミーユ・ダルメとのコラボレーションである。「マークのビジョンと、カミーユの参加のおかげで、多くの音楽が見事にまとまった」とジマーは言う。「今回、私がとくに楽しんだのは、カミーユとのコラボだった。マークも彼女の音楽に感動していたよ。カミーユのおかげでこの映画がさらに豊かな作品になった」

 オズボーンも同感だ。「カミーユはこの映画にふさわしい楽曲を提供してくれただけでなく、彼女は独特な声の使い方で映画全体を盛り上げてくれた。彼女はこの映画の世界をすべてつなげる役割を果たしている。初めて彼女の声を聞いたときはほんとうに興奮したよ。彼女の声は、この映画の“女の子”の内面の魅力的な象徴となり、全編を通して輝いている」

 ジマーによれば、本作のために音楽をまとめていくプロセスは、自然な調和をとても大切にした創造性あふれるものだったそうだ。「私たちは皆、ひとつの部屋でジャム・セッションをしながら、映画の主だった映像に合わせていった」と彼は思い返す。「ありきたりなポップスを適当に使うのではなく、私たちの音楽はこの映画の“オーダーメイド”だった。サウンドトラックも、映画の純粋で手作り感あふれる性質にヒントを得たんだ」

 「空間も楽器なの。アカペラの場合はとくにね」とカミーユは言う。「私にとって、言葉は音のトランポリン。言葉はそのときの空気、瞬間に応じて跳ね返ったり、共鳴したりする。空間が重要な役割を果たすの」

 因習にとらわれないという点で世代を代表するシンガーのひとりであるカミーユは、その斬新なボーカル・エフェクトと巧みなボディ・パーカッションで世界的に知られている。彼女は、英語とフランス語の両方を難なくこなし、とんでもないほどキャッチーなメロディーで、型破りな曲を創ることができるのだ。4枚のオリジナル・アルバム――「パリジェンヌと猫とハンドバッグ」(02)、「Le Fil」(04)、「ミュージック・ホール」(08)、「Ilo Veyou」(11)――は、刺激的でありながら親しみやすさを保ち、新たな領域へ大胆に挑んでおり、高い評価を受けた。

About The Original Book

クイズです。この絵は何に見えますか?
帽子のようですが、帽子ではありません。
ヒントは、「こわいもの」です。
正解は「ゾウを丸ごと飲み込んだヘビ」の絵です。

こんな奇妙な絵から始まるサン=テグジュペリの名作『星の王子さま』。この物語が、なぜ世界中で愛されているのでしょうか。それは、目に見える世界だけが全てではないことを教えてくれるからです。
世界はなぜ美しいのか、誰かを好きになるとなぜ涙がこぼれるのか、人を思う気持ちはどこから来て、どこへ行くのか——
砂漠で見つけた泉のように、ずっと探していた大事なものと出会える、一生に一度の物語。それが、『星の王子さま』なのです。
1943年の初出版以来、世界の発行部数は1億4500万部以上、翻訳された言語・方言の数は270以上にものぼります。これは聖書の次に翻訳数の多い世界的ベストセラーです。

「秘密をひとつ教えてあげる。大切なことは、目に見えないんだ。」

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あらすじ

飛行機が不時着した砂漠で“ぼく”は、ひとりの男の子と出会いました。遠い小惑星からやってきたという小さな星の王子さま。故郷の星では、美しい一輪のバラと暮らしていたのだと言います。愛するバラを残して故郷を旅立ったのは、バラの気持ちがわからなくなってしまったからでした。行く先々の星で、威張ったり、うぬぼれたりしているおかしな大人たちと出会い、7番目に降り立った地球で、王子はキツネと友だちになりました。別れ際、キツネはこんな「秘密」を教えてくれました——「大切なことは、目に見えないんだ」。 そして1年が経とうとする頃、王子は砂漠に不時着した“ぼく”と出会ったのです。一緒に砂漠の井戸を探し、やっと見つけた井戸から“ぼく”が一生懸命に汲み上げた水を、王子は、それはおいしそうに飲みました。地球に来てちょうど1年目の夜のこと、王子は“ぼく”の前から姿を消してしまったのです。

王子さまが出逢う友達や大人たち


バラ

故郷の星に咲くわがままで気難し屋の美しい花。バラを大切に思う王子は手をかけて育てたが、やがて気持ちがすれ違ってしまう。


キツネ

地球に来ても砂漠ばかりでひとりぼっちの王子に、初めてできた友達。「つながり」や「絆」を教える存在。


大人たち

王子が巡った星々の住人。支配したいだけの「王さま」、褒められたがりの「うぬぼれ男」、所有したがる「ビジネスマン」など、王子にとってはよくわからない人ばかり。


ヘビ

王子が地球で初めて出会った相手。指みたいに細いとからかう王子に対して、「どんな船より遠くに君を連れていける。」と、いつか王子が自分の毒牙を必要とすることを予言。

「君が時間をかけて育てたからこそ、そのバラは大切なんだよ」

自分の星に残してきた一輪のバラこそが世界で唯一の美しいものだと信じていた王子。けれど、地球にはそっくりの花たちが5千ほども咲いていたのです。戸惑い泣きじゃくる王子にキツネが、本当に大切なことは何かを伝える言葉です。

「星の王子さま」にまつわる秘密

ミステリアスなサン=テグジュペリの最期

自らも飛行士だったサン=テグジュペリは、第二次世界大戦終盤に偵察隊として参戦、1944年7月31日、フランス、コルシカ島から飛び立ったまま消息を絶った。その最期は謎とされていたが、60年後の2004年、地中海に沈む機体の一部が彼のものと確認された。しかし遺体はいまだ発見されず、なぜ海に墜落したのかも謎のまま……

妻のために書かれたラブストーリー

妻コンスエロは美しく魅力的な女性だったが、13年間の結婚生活は、おもに彼のわがままが原因で平穏とはほど遠く、別れと再会の繰り返しだった。それでも離れることができなかったのは深い愛で結ばれていたから……。友人レオン・ウェルト宛てに書かれた「おとなは、だれも、はじめは子どもだった」で有名な献辞も、本当は彼女に捧げられるはずのものだった。

世界の伝説的な作家たちをも魅了

世界中にファンのいる原作は、多くの国でオペラやミュージカル、舞台に脚色されている。映画化に最初に挑んだのは鬼才オーソン・ウェルズで、ウォルト・ディズニーとの共作としてシナリオまで書いたのだが、天才二人は途中で決裂、この企画はなくなってしまった。

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