長谷川町蔵 (文筆家)
肉を喰らわば、魂までも。禁断の恋によって解き放れたふたりが巡る80年代アメリカ放浪記。血だらけなのに、不思議と甘酸っぱいのは何故だ。現役(もちろん退役も!)少年少女にぜひ観てほしい異形の青春映画だ。
よしひろまさみち (映画ライター)
人喰いがメタファーなのは一目瞭然。『ぼくのエリ 200歳の少女』(08)にも似た若きアウトサイダーの純愛を、オトナだけが愛でられる幸せに浸る。“君僕”の父子が本作では全く違う関係になったことも感慨深いわ。
尾崎秋彦 (映画.com)
サッカーW杯・日本代表戦の翌日に鑑賞したが、その興奮がぶっ飛ぶほどの衝撃度。“人喰う人々”の“2人の人喰い”が、どこからきて、どこへゆくのか。クライマックスの“赤”は、どこまでも美しく、切なくて……。人間存在を深く探究する物語はその深度と鮮烈さゆえ、賛否の旋風を巻き起こすはず。映画を愛する人に、観て感じて、語り合ってもらいたい一作だ。
立田敦子 (映画ジャーナリスト)
孤独と傷みというテーマに真っ向から挑み、 カニバリズム・ホラーというスタイルに昇華させた 清涼感さえ感じさせるあまりに美しい青春譚。『君の名前で僕を呼んで』を越えるティモシー・シャラメの最高傑作!
SYO (物書き)
大人の負の遺産を、ぼくらは押し付けられて。いまをこの手に取り返そうと日々もがいてる。だから、二人の痛みと孤独なにおいがわかる。そして願う。この世界に安息があるようにと。鮮血のように清く美しく、あたたかな純愛。映画が居場所を設え、観客が祝福を与える。
山崎まどか (コラムニスト)
痛ましくも愛らしい二人の逃亡者。
この世界に居場所がないと感じる人たちはただただ彼らに思い入れ、そうでない人々も凶暴な獣だけが持つ無垢に震撼するだろう。
大島依提亜 (グラフィックデザイナー)
ルカ・グァダニーノの映画は自由だ。風を吹かせたいと思えば吹き、雨が降ればいいと思えば降る。閉塞感についての映画だが、誰もやった事がない方法で、それがのびのび描かれる。観るものはただ映画に身を委ねれば良い。
堤 日出子 (FILMAGA編集部)
空腹を満たしたい、居場所が欲しい、愛されたい。異端な彼らが欲したのは、至って普通の幸せだった。社会の溝を這うように生きてきた2人が、文字通り「骨まで愛して」くれる人に出会う逃避行の果て、世界は一瞬だけ2人のものになる。乾いた空気に映える血の赤が、頭を離れない。
西川亮(DVD&動画配信でーた編集長)
前知識ほぼナシで観に行ったら、突然主人公が人肉を食べだして驚いた。ティモシー・シャラメも一緒に食べだしてさらに驚いた。マーク・ライランスはキャリア史上最もねちっこい喋り方で、そのキモさにたじろいだ。『君の名前で僕を呼んで』、『サスペリア』のリメイクと来て最新作は人喰いホラー×青春恋愛ロードムービー。ルカ・グァダニーノの頭の中は一体どうなってるのか。