映画『クライ・マッチョ』 Cry Macho

※順不同・敬称略
山田洋次
映画監督
「もっと老けろ、背を曲げてヨロヨロ歩け!」と叱りつける凛々しい監督と、
穏やかに従う老俳優の姿が目に浮かぶ。
両方ともクリント・イーストウッドだ。
ゆりやんレトリィバァ
お笑い芸人
『グラン・トリノ』さながらのイーストウッドと少年の絆が、胸にグッと込み上げてくるものがありました。最後に何があるか分からないのがイーストウッド監督作品ですが、本当に感動しました。大好きなイーストウッドは永遠の憧れや!
李相日
映画監督
「ミリオンダラー・ベイビー」の”その後”を観ているような感慨が湧く。全てを失い失踪した男が、この作品では背中を曲げ愛する人とゆったりと踊る。温もりこそ、人生の終着点なのかもしれない
LiLiCo
映画コメンテーター
この“強さ”をこんなにも優しく描けるのが
クリント・イーストウッドの強さ。
石川真澄
画家/絵師
イーストウッドは、絵師で言うとまるで北斎だなと思います。歳を重ねるごとに円熟味が増して、決してものづくりの情熱は衰えない。北斎が画狂老人ならイーストウッドはまさに映画狂老人。こんな歳のとり方は僕の憧れです。
相田冬二
Bleu et Rose/映画批評家
きらきらしている。
渋い、とか。いぶし銀、とか。年輪、とか。
そんなんじゃなく。
彼だけの道を、彼ならではの速度で歩く。それが、このひとの好奇心。
きょうもあしたもあさっても。イーストウッドのまなざしは輝いている。
石津文子
映画評論家
クリント・イーストウッドは死神を演じ続けてきた。しかし『クライ・マッチョ』のイーストウッドには、死の匂いはしない。あるのは、愛だ!
宇野維正
映画ジャーナリスト
『グラン・トリノ』と『運び屋』ですっかり「遺言」を受け取ったつもりでいたところに届いた、
かくも軽やかなイーストウッドによる最後の「懺悔」。
過去に一度でもイーストウッドに魅了されたことがあるなら、その姿をスクリーンで見届けなくてはいけない。
金澤誠
映画ライター
老いても自分のスタイルを崩さない、イーストウッドの存在感が圧巻。彼の監督作では「センチメンタル・アドベンチャー」の系譜に連なる、年の離れた男ふたりのロードムービーだが、過去に対する悔恨を背負った主人公の中に、“弱さ”と“優しさ”がにじむところが、90歳になったイーストウッドならではの境地。清々しい後味が残る、新たな代表作だ。
菊地成孔
音楽家/文筆家
イーストウッドまさかのド直球ヒーローもの。40代想定の、古き良き英雄を90代で衒いなく演じる、円熟とかそういうレベルでは無い、能や舞台劇の境地。
清藤秀人
映画ライター
少年と旅するイーストウッドの筋肉はさらに削げ落ちて、骨格ばかりが目立つし、声もか細い。けれど、漂う人間に対する肯定感はひたすら頑固で力強く、不思議なことに自分の未来にも限界がないような気がして来るのだ。
操上和美
写真家
人間と映画を知り尽くしたイーストウッドの新境地。
斉藤博昭
映画ライター
安定の演出力。しかし予想をはるかに超えてきたのは、しみわたる後味だった。
イーストウッドは、なぜこの役を自分で演じようと思ったのか?
主人公の運命を見届けたその瞬間、巨匠がめちゃくちゃ愛おしく、胸が張り裂けそうになった!
芝山幹郎
評論家
人生に根気よく向き合っている人なら、この映画の味わいがわかるはずだ。心の深い人、実のある人も。イーストウッドの運転する車は、やはり乗り心地がよい。
中条省平
学習院大学教授
本作に至って、イーストウッドはアメリカ的ヒーローの限界を超える、静謐にして奥深い人間像を打ち立てたといえよう。
東山彰良
作家
若いころにヤンチャをやった年寄りを演じさせたら、
イーストウッドの右に出る者はいない。なんといっても存在に説得力がある。
こういう年寄りを見せられたら、年を取るのも悪くないなと思えてくるのだ。
樋口泰人
爆音映画祭プロデューサー/映画評論家
存在の絶対的な軽さがあらゆる常識をはるかに超えて、夢のように幽かでしかし消しがたい傷跡のような映画を作り上げた。90歳のイーストウッドが馬に乗って画面を横切る。ただそれだけで涙があふれ画面は霞み、そのぼんやりとした風景の中で、われわれは「永遠」という時間に直面するのだ。
前野裕一
『キネマ旬報』編集部
少年との会話、馬を愛でる表情、女性への接し方、そして、メキシコの大地にたたずむ姿……。決して強調することなく、さらりとした描写ながらも、見る者に“深さ”を感じさせる演出。「クライ・マッチョ」は、イーストウッドの一つの到達点だろう。
松崎健夫
映画評論家
クリント・イーストウッドは“自省”する映画作家である。かつてのモチーフを再び用いた時、現代的なアプローチで常にアップデートしてきたからだ。例えば、師弟関係や疑似家族的な人間関係、或いは、民族や人種に対する描写。老年を迎えても変容を厭わぬ姿勢、それはイーストウッドが名匠たる由縁だ。
森直人
映画評論家
また機会が訪れたイーストウッド詣で。
厳粛な気持ちで出向いたら、若作りとも老害とも無縁な、ひたすら聡明でちょっとチャラい不良のカウボーイがいつものように居た。
新参の名手ベン・デイヴィスのカメラが捉えた笑顔が眩しい。