PRODUCTION NOTE
笑って泣けてキュンとする、かつてない恋愛映画!?
本作の企画は、プロデューサーが書店で見かけた原作コミックの「ヒロイン失格」というキャッチーなタイトルに惹かれたことから始まった。少女漫画らしからぬ、ティーンの女子の本音を赤裸々に語るヒロインと、彼女を取り巻く、クールな幼なじみと優しすぎるモテ男。男女1対1のラブストーリーが王道の今、3ショットのヴィジュアルと邪道ヒロインが巻き起こすユーモア溢れるストーリーという組み合わせが、かつてない作品の誕生を予感させた。原作者から映画化への快諾を得て、脚本はティーンの女性の心情が分かる人をと、累計45万部の小説「脳漿炸裂(のうしょうさくれつ)ガール」シリーズや、漫画「TIGER&BUNNY」の共同脚本を手掛ける、20代で新進気鋭の女性脚本家・吉田恵里香に依頼。監督は『ハンサム★スーツ』などで定評のある英勉に依頼したところ、そのテーマに大いに共感してもらえ快諾、巷のラブストーリーとは異なる斬新な恋愛映画を作りたいという想いが一つになった。
桐谷美玲が初めて自ら熱望した役
プロデューサーが社内に企画を提案した数日後、滅多にない偶然が起きる。桐谷美玲が所属する事務所スタッフが日本テレビを訪れ、桐谷主演で映画化してほしい作品があると持ち掛けたのだが、それが『ヒロイン失格』だった。原作連載時から、「ものすごく面白い漫画がある」と桐谷本人がブログやラジオで語っていたのは、ファンの間では有名だった。普段はどんな役がやりたいかなど主張したことがなかった彼女が、初めて熱望した作品だった。それまで製作スタッフは、主人公・はとりのキャスティングは難航すると予測していた。規格外の演技が全編にわたるので、女優サイドに相当な覚悟がないと、映画の魅力が半減してしまう。心の底から演じたいという桐谷美玲の情熱は、企画を実現する上での大きな原動力となった。クランクイン前の顔合わせの席で、英監督からはとりの“変顔”はCGに頼らず本人に実際にやってもらいたいが出来ますか?と念を押され、「100%OKです」と胸を張る桐谷美玲。実は映画化が決まる前から、はとりの変顔を真似して遊んでいた程、作品への思い入れは強かった。逆に脚本を読んだ彼女の方からも、原作コミックの中のいくつかのシーンや台詞から「これは入れてほしい」という提案があった程。
利太には人気急上昇中の 実力派若手俳優・山﨑賢人
利太役は、英監督の“風のような男”というイメージに従ってキャスティングされた。どことなくとらえどころが無い風貌でいて、ある時スッと相手の懐に入って来る。傷つけるのも、傷つけられるのも怖くて、風のように人と接してしまう。しかし実は、表には出さない大きなトラウマを抱えてもいる。選ばれたのは、山﨑賢人。山﨑の繊細な表現力が、この難しい役を演じられるのは彼しかいないとプロデューサーと監督を確信させた。山﨑は脚本だけでなく原作コミックを深く読み込み、利太の魅力は普通にカッコいいだけではなく、少しヘタレなところが母性本能をくすぐるのだと分析。さらに劇中で利太が身に着けるピアスは、自分でイメージに合うものを探して来て監督に提案する程、利太という役を突き詰めて演じていた。
弘光にはブレイク必至の 注目株・坂口健太郎
一方、弘光は英監督曰く“太陽のような男”。明るくその場を照らし、温かく人を包み込む。だが、実は見えないほど薄い壁を人との間に持っている。抜擢されたのは、『海街diary』『予告犯』『俺物語!!』など出演作が相次ぐ、坂口健太郎。専属モデルを務める「MEN’S NON-NO」をみて、まさに監督のいう「太陽のような」雰囲気を感じて抜擢された。また本人も、弘光の人との接し方が自分に似ていて共感できたという。
寒くて過酷!なのに笑いの絶えない撮影現場
撮影は2015年1月30日からスタート。1年で最も寒い季節でスケジュールも厳しく、肉体的には相当過酷だったはずだが、とにかく笑い声に包まれた現場だった。キャスト陣の熱のこもった演技に、英監督自らが「カット」をかける前に自分で笑ってしまうのもしょっちゅうだったという。共演者たちもすぐに意気投合、控室ではブームだったお笑いで盛り上がったり、丁度撮影中に誕生日を迎えた我妻三輪子を祝ったりと、本当のクラスメートの様だった。原作の幸田もも子先生も撮影現場を訪問、「皆さん原作のイメージ通り」と太鼓判を押した。目の前で変顔を披露して、「大丈夫ですか」と確認する桐谷美玲に、先生は「完璧すぎます」と爆笑、その後も何度も現場を訪れてキャスト・スタッフを労ってくれた。
撮影前の約束を超えて頑張り度120%の主演女優
監督の指示ではなく、自ら変顔を繰り出したという桐谷美玲。誰も見たことのない表情が満載で、その引き出しの豊富さは、日々新たに研究しているに違いなかった。弘光への衝撃のガン付け顔は、共演の福田彩乃に教わったモノマネを取り入れたという噂だ。池ポチャのシーンは、事前に池に入ったスタッフが、「絶対ムリ!」と叫ぶくらいの真冬の冷たさだったが、桐谷美玲の頑張りで寒さなど微塵も感じさせない真夏の画に仕上がる。ダンスは実は一番苦手だったが、練習で何時間も踊り続けた。坊主頭の特殊メイクに、要した時間は3時間。仕上がりに一番喜んだのは本人で、写真を撮りまくっていた。頑張るだけでなく、楽しむのも美玲流なのだ。
初めは戸惑いながらも全員ノリノリだったご本人出演
原作の面白さは出来るだけ活かそうというコンセプトのもと、原作で、はとりが柳沢慎吾風な表情をしているネタを、柳沢本人にお願いする事にした。脚本には「あばよ!」のひと言だけ。流石に断られるのでは、と心配したが、作品の面白さを理解してもらえ快諾を得られた。柳沢は長時間のヘアメイクと短時間の本番をめいっぱい楽しみ、自身の撮影終了後には、監督や出演者を巻き込み、即興で、警視庁24時ネタまで披露して皆を喜ばせてくれた。映画オリジナルのご本人出演ネタとして、中尾彬と六角精児の出演シーンを創作。桐谷美玲と過去に共演したことのある中尾彬は、「内容は全く意味が分からなかったけれど、桐谷が出ているから出たんだよ」とコメント。しかし大御所の演じるアイスクリームのシーンは、重厚さと軽妙さが絶妙の名シーンとなった。六角精児は山梨の山中での撮影となったが、30分もかからずにOKがでて撮影は終了。「こんな短い出演で花束まで貰ったのは初めて」とのこと。
こだわりぬいたファッションとシーンごとに変わるはとりのヘアメイク
ファッションも大きな見どころの一つ。英監督からは品質感にこだわり、ファッション誌のようにきらびやかに見せたいというオーダーが出された。制服はスタイリスト・浜井貴子のデザイン。イギリスの名門校のようにという監督のリクエストに応えて、大人っぽいダークブラウンでまとめた。冒頭とラストの登校シーンのためだけに、このオリジナル制服を150人のエキストラ分用意したとか!オシャレな制服は参加したエキストラにも大好評だった。その他の私服のシーンも、メイン3キャストが着こなす様は、まさにファッション誌そのもの!と現場でもスタッフからため息が出ていた程。もうひとつの見所は、シーンごとに変わるはとりのヘアスタイル。原作コミックがまさにシーンごとに変わって描かれていた為、普段、実写映画では余り例をみないが、コミックの描写を再現する事に挑戦した。橋本申二率いるヘアメイクチームは細かなリストを作って撮影時44種類ものヘアスタイルを見事に再現した。
若手3人を支える多才な共演者たち
「脚本は面白いけど、どうやって撮るの?」と心配していた学食のオヤジ役の竹内力が、桐谷美玲の演技に感心。はとりの親友の中島役の福田彩乃はモノマネで現場を盛り上げ、打ち上げでは監督のマネを披露。安達役の我妻三輪子の嫌われ者に徹した演技は圧巻で、特に利太から誘われて一緒に帰る時に、チラッとはとりを振り返るアドリブは、女性スタッフ陣に「イヤラシー!」と絶賛された。監督からの推薦で、恵美役は高橋メアリージュンが扮し、短いシーンながら「弘光の元カノ」と誰もが納得する流石の存在感を残した。どう演じるかで観客が受け取る雰囲気が変わってしまう利太の母親役は難しく、重苦しくならずに演じられる方という事で濱田マリが選ばれ、絶妙の雰囲気を演じてスタッフを唸らせた。
粘り強いロケハンで見つかった、バラエティに富んだロケ地
はとりと利太の通学路として使われたのは、横浜市金沢区にある歩道橋。ロケハンを重ねた中から選ばれただけあって、少し変わったデザインと、橋から見える街並みが印象的だ。はとりと弘光の重要なシーンである観覧車は、このシーンの撮影のためだけに訪れた長崎・ハウステンボス。営業時間が終わってから、世界最大級と言われるイルミネーションをバックに夜明け近くまで撮影が行われた。終盤のクライマックスシーンは、山梨県のハイジの村。そこで実際に挙げられた結婚式の写真を見た監督が、キャンドルに溢れた幻想的なシーンのアイディアを思いつき、敷地内の石畳をキャンドルで埋め尽くす事に。リハーサルを終え、日暮れを待ち、いよいよナイターシーンの撮影!となり、スタッフ総出で約3000個ものキャンドルに一斉に火をつけ始めた。しかし、八ヶ岳から吹き降ろす風で、キャンドルの炎が直ぐに消えてしまうハプニングに見舞われ、撮影が中断してしまう事態に。強風で撮影が続行できない状態に呆然とする中、奇跡が起きる。皆の想いが通じたのか、風が止むという信じられない事が起きたのだ。学校はいくつかの大学や、商業施設を組み合わせて「幸田学園高校」を完成させた。
本物の映像作りのために集められた一流スタッフ
撮影、照明、録音、美術は、ベテラン揃い。こういうはっちゃけた物語だからこそ、しっかりした映像を作りたいという英監督の元に集結した、選りすぐりのスタッフだ。本人たちは、「俺たちオジサンが、こんな高校生の映画作っていいのかなぁ?」と冗談混じりだったが、監督の意図を的確に汲んで素晴らしい映像を作り上げた。クランクアップ後は、すぐにCG制作に突入。スライディング土下座、壁走り、宙を舞う大量の弓矢など、思わず笑ってしまうが、やはりここでも監督は、メインはあくまで3人のキラキラした物語であり、浮いた感じにはしたくないとシンプルだが緻密な画作りに徹した。音楽には、めまぐるしく変わるシーンに対応する柔軟さと多様さが求められた。監督から非常に細かいオーダーが出されたが、多彩なフィルモグラフィーを誇る横山克が手がけた。監督とスタジオにこもり、その場で即興で演奏・修正するなど、フレキシブルに対応、ヒロイン失格に相応しい意外性に溢れたスコアが完成した。『ヒロイン失格』という映画の主題歌として、若い女性の赤裸々な心情を自らの言葉で書けるアーティストにと依頼されたのは、西野カナ。映画を観た後に相応しい、可愛くて、ちょっと毒のある、それでいて清々しい名曲が誕生した。