ホラー小説界の頂点に君臨するスティーヴン・キングの小説の中でも、これほど恐れられた作品はない。
「IT」――それは発刊以来30年にわたって、世界中の読者に強烈なトラウマを植え付けてきた。そんな傑作小説を、ギレルモ・デル・トロ製作総指揮の新感覚ホラー『MAMA』で監督を務め、頭角を現した俊英アンディ・ムスキエティが映画化。『キャリー』『シャイニング』『ミザリー』と、キング小説はこれまでにも多くの傑作映画を生み出してきたが、『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』は、まさしくその決定打だ。
ドラマの肝となるのは、子供時代の底知れぬ恐怖心。誘拐、殺人等の現実世界での事件に加え、殺人ピエロやクリーチャー、鮮血などの現実とも幻想ともつかぬ衝撃的なビジュアルが刻み込まれる。それらに直面した子供たちの心理的圧迫は、観客の心理とシンクロして緊迫感を盛り上げずにはおかない。また、世にもおぞましいこの世界が子供にしか見えないという設定には寓話的な深みがあり、そこに宿る大人と子供の世界の違いを見据えたリアルな視点により、本作はキング原作映画らしい観ごたえ満点の傑作となった。
予告編がインターネット上でアップされるや、『ワイルド・スピード ICE BREAK』『美女と野獣』を抜き、24時間で1億9700万回という史上最多の再生回数を記録(2017年3月31日時点)。それとともにアメリカでは、実際に町にピエロが出没するという奇妙な現象が相次ぎ、影響力の大きさをうかがわせた。スティーヴン・キング本人が「この映画は大きな話題になる」と太鼓判を押した本作。日常を侵食する“それ”は最恐のトラウマになる!