米アカデミー賞に2度ノミネートされ、英アカデミー(BAFTA)賞を1回受賞。映画/演劇界になくてはならない、引く手あまたの才人のひとりである。
ネオリアリズムの奇才ルキノ・ビスコンティ監督が映画化した『郵便配達は二度ベルを鳴らす』(43)の新しい舞台バージョンに出演するため、2017年4月、バービカン・シアターに戻り、既婚女性との情熱的な情事にはまり、女の夫の殺害計画を立てる魅力的な放浪者ジーノを演じている。この舞台劇は、権威あるオリビエ賞受賞歴をもつオランダ人演出家イボ・バン・ホーベが演出している。
16年にベネチア映画祭でプレミア上映されたHBO放送のTVミニシリーズ「ピウス13世 美しき異端児」(16~/共演:ダイアン・キートン)で、新しく選出され、その責任の重圧に苦しむローマ教皇ピウス13世を演じた。この作品は10話構成で、パオロ・ソレンティーノがクリエイターと監督を務め、イギリスではスカイ・アトランティックで放送された。
同年、多作の監督マイケル・グランデージと2度目のタッグを組み、『ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ』(共演:コリン・ファース、ニコール・キッドマン、ローラ・リニー)に出演した。物語は、マックス・パーキンズがスクリブナー出版社で編集者として活躍した時代を記録に留めている。パーキンズは、ロウ扮するアメリカ人小説家トマス・ウルフの作品の編集作業に取り組む。
近作には、カレーニン役を演じたジョー・ライト監督の『アンナ・カレーニナ』(12)、スティーブン・ソダーバーグの長編映画最後の監督作で高評価を得た『サイド・エフェクト』(13/共演:ルーニー・マーラ、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)、ウェス・アンダーソン監督の受賞作『グランド・ブダペスト・ホテル』(14)、ケビン・マクドナルド監督の潜水艦を舞台にしたドラマ『ブラック・シー』(14)、ポール・フェイグ監督のコメディ『SPY/スパイ』(15・未/共演:メリッサ・マッカーシー、ローズ・バーン、ジェイソン・ステイサム)などがある。
キャリア初期に演じた『オスカー・ワイルド』(97/共演:スティーブン・フライ、バネッサ・レッドグレーブ)のボジー役の演技で、ロンドン映画批評家協会賞とイブニング・スタンダード賞を受賞。未来を描いた『ガタカ』(97/出演:ユマ・サーマン、イーサン・ホーク)でアメリカ映画デビューを飾った。
故アンソニー・ミンゲラ監督の『リプリー』(99)で、魅力的なディッキー・グリーンリーフ役を演じ、世界中の観客の注目を浴び、米アカデミー賞とゴールデングローブ賞の最優秀助演男優賞に初めてノミネートされた。同役でBAFTA賞を受賞。ミンゲラ監督とはそれ以降、『コールド マウンテン』(03)と愛と人生の葛藤を描いた『こわれゆく世界の中で』(06)で2度チームを組んでいる。『コールド マウンテン』では、米アカデミー賞とゴールデングローブ賞の最優秀主演男優賞にノミネートされた。
ほかに、クリント・イーストウッド監督の『真夜中のサバナ』(97)、デイビッド・クローネンバーグ監督の『イグジステンズ』(99)、ジャン=ジャック・アノー監督の第二次世界大戦を描いた大作『スターリングラード』(01)、サム・メンデス監督の『ロード・トゥ・パーディション』(02)、パトリック・マーバーのオリジナル戯曲を映画化したマイク・ニコルズ監督の『クローサー』(04/共演:ジュリア・ロバーツ、クライブ・オーウェン、ナタリー・ポートマン)、『スカイキャプテン ワールド・オブ・トゥモロー』(04/共演:グウィネス・パルトロー)、アルフィー役を演じたチャールズ・シャイア監督の『アルフィー』(04)、エロール・フリンを演じたマーティン・スコセッシ監督の米アカデミー賞ノミネート大作『アビエイター』(04)、デイビッド・O・ラッセル監督の『ハッカビーズ』(04)、『ホリデイ』(06/共演:キャメロン・ディアス)、『オール・ザ・キングスメン』(06/共演:ショーン・ペン)などがある。07年、ハロルド・ピンターが脚本を担当したケネス・ブラナー監督の『スルース』(共演:マイケル・ケイン)では出演だけでなく製作も務めた。ウォン・カーウァイ監督初の英語を言語とする映画『マイ・ブルーベリー・ナイツ』(07/共演:ノラ・ジョーンズ)に主演。そののち、テリー・ギリアム監督の『Dr.パルナサスの鏡』(09)で、故ヒース・レジャーが演じた役をジョニー・デップ、コリン・ファレルととともに3人で引き継いで演じ、ミゲル・サポチニク監督の近未来サスペンス『レポゼッション・メン』(10/共演:フォレスト・ウィテカー)にも主演した。
09年にベルリン映画祭でプレミア上映されたサリー・ポッター監督の『Rage』では、異性の服装で登場するモデル役でカメオ出演した。また、大成功を収めたガイ・リッチー監督の『シャーロック・ホームズ』(09)とその続編『シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム』(11)でジョン・ワトソンを演じ、ロバート・ダウニーJr.と共演。そのほか、マーティン・スコセッシ監督の『ヒューゴの不思議な発明』(11)、スティーブン・ソダーバーグ監督の『コンテイジョン』(11)、フェルナンド・メイレレス監督の『360』(11・未)にも出演し、アニメ『ガーディアンズ 伝説の勇者たち』(12・未)では声の出演をしている。
舞台でも賞賛を浴びてきた。最近、マイケル・グランデージ演出の「ヘンリー五世」に出演し、高評価を受けた。94年には、ジャン・コクトーの戯曲「恐るべき親たち」でミシェル役を演じ、イアン・チャールソン賞最優秀新人賞にノミネートされた。この舞台劇は、ブロードウェイに移ってタイトルを「Indiscretions」と変えて上演され、同役の演技でトニー賞最優秀助演男優賞にノミネートされた。
ロンドンのヤング・ヴィック・シアターで演出家デイビッド・ランとともに仕事をし、「あわれ彼女は娼婦」、クリストファー・マーロウの戯曲「フォースタス博士」に出演し、高評価を得た。05年から06年にかけて、ヤング・ヴィック・シアターの大改修のための募金キャンペーンに尽力した。09年、ウエストエンドのドンマー・シアターでマイケル・グランデージ演出の「ハムレット」に出演。この舞台劇と自身の演技を絶賛されて同年9月にはブロードウェイでも上演され、シェイクスピア劇の上演史上最大のヒット作となり、ボックスオフィスの記録を打ち破った。10年2月、ロンドン批評家協会賞シェイクスピア部門最優秀演技賞を受賞し、オリビエ賞とトニー賞の最優秀男優賞にもノミネートされた。11年、ドンマー・シアターで上演されたユージン・オニールの戯曲「アンナ・クリスティ」で舞台に戻り、その演技を絶賛された。
07年、映画への貢献を称えられ、権威あるフランスの芸術文化勲章シュバリエを受章し、同年にはセザール賞も受賞している。12年、有名な英インディペンデント映画賞バラエティ賞を受賞。慈善団体ピース・ワン・デーの大使も務めている。
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