❖企画の成り立ち
なぜいま「ママレ」の実写化なのか、これまでの少女マンガとの大きな違い
少女マンガを原作とする青春恋愛映画は、いまや日本映画界に欠かせないジャンルであり若手俳優の登竜門でもある。次はどのマンガが映画化されるのか──常に期待が寄せられるなかで「実写化してほしい少女マンガは?」という市場調査でだんとつトップに挙がったのが、吉住渉による「ママレード・ボーイ」だった。集英社の「りぼん」にて1992〜1995年に連載、1994〜1995年にかけてテレビアニメ化、1995年にアニメの前日譚に当たるストーリーが劇場アニメ化、2001年には台湾で実写ドラマ化、そして2013年より13年後を舞台にした続編「ママレード・ボーイ little(リトル)」が「ココハナ」にて連載中。連載から25年経った今も愛されている原作の映画化はファンにとって待望ではある。しかし、なぜ今このタイミングで映画化なのか。それは「ママレード・ボーイ」の設定の面白さにあった。初めての恋から愛情へ、若い2人に立ちはだかる試練、三角関係、親友との絆……恋愛映画の要素がすべて取り入れられているだけでなく、そこに“大人”が介入することでより深いドラマになっている、それが「ママレード・ボーイ」が特別である理由だ。「若いカップルの話だけでなく、その親を交えての話。いま、少女マンガがたくさん映画化されているなかで、そこが格別に違う点であり、新しさを出せると思った」というプロデューサーたちの熱意を引き受けた廣木隆一監督にとっても大きな挑戦となった。「毎回挑戦ではありますが、子供は子供の世界で大人になっていく、というのが少女マンガ原作の映画における僕自身のテーマでしたから、今回は特に挑戦でした。何しろその大人が一番やっかいな存在ですから(笑)」。大人のラブストーリーだけでなく、『ストロボ・エッジ』『オオカミ少女と黒王子』『PとJK』、少女マンガをティーンから大人まで楽しめる人間ドラマとして描くことに長けた廣木監督によって、国民的少女マンガが国民的恋愛映画としてスクリーンに映し出されることになった。