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未完の原作に挑む覚悟
山川直輝(原作)&朝基まさし(作画)による原作は、現在も連載中の大人気コミック。劇場版の公開時期には、こちらも現在最終章に突入している。原作の第1部では、娘・零花の彼氏で半グレメンバーだった延人を殺した哲雄が、組織に追われる姿。第2部では、哲雄の妻・歌仙の過去にまつわる事件。連載中の第3部では、刑事になった零花が父親に疑惑の目を向け、真実に迫っていく姿が描かれている。原作の第1部をしっかりと映し出したドラマから続く劇場版では、第3部をベースにしたオリジナルストーリーとして制作に挑むこととなる。「脚本開発にはとても苦労をした」と声を揃える製作陣。何よりも大切にしたのは、原作へのリスペクトだと力を込める。

軸となったのは、本作が「家族の物語であること」と「ジェットコースター感のあるエンタメ」であること。原作第3部に描かれている、“両親に守られる立場であった零花が、7年後には刑事となって自立している”という展開そのままに、“殺人犯である父親と、刑事になった娘の対決”というシビれるような構図をいかに盛り上げていくかということに注力して脚本開発が進められた。
「2時間の映画にする上で、そこに没入してもらうためにもジェットコースター感は欠かせない要素だと思っていました」と、何が起きるかわからないハラハラ感が不可欠とプロデューサー陣は語る。その一方で、本作には「“あなたにも起こりうるお話だ”という部分も大切にしたかった」という想いも込められている。「哲雄は自分の家族を守りたい一心で、殺人を犯してしまう。その不条理さこそが、この物語の魅力でもあり、多くの方を惹きつける共感ポイントだと感じています」、また「自分ごととして感情移入できるストーリー。大事な人が酷い目にあったとしたら…と考えさせられる」と口を揃えるプロデューサー陣。原作者の協力やあらゆる試行錯誤を経て、映画ならではの、ドラマチックなクライマックスへと辿り着く劇場版の脚本が完成した。
原作再現度100%のキャスティング
原作再現度100%と言われ、原作ファンからも注目を集めた主人公・鳥栖哲雄役の佐々木蔵之介をはじめ、ドラマからの続投組、劇場版からの参加組にも個性豊かな実力派俳優が顔を揃えている。

ヒーローでありながら犯罪者でもあるという、その狭間でもがき続ける葛藤を見事に演じ切った佐々木について、製作陣は「哲雄役には蔵之介さんしか考えられなかった」と切り出し、「哲雄は、コメディ要素のあるキャラクターでもあって、そういったところも蔵之介さんにぴったりですし、“家にいる普通のお父さん”ということに対して説得力のあるお芝居もできる。また哲雄は、人を殺してしまって、そこから恐ろしさが増していくようなキャラクターでもありますよね。蔵之介さんは、“こんなに愛情深いお父さんがまさか人を殺さないだろう、こんな表情を見せないだろう”という、哲雄が内包するギャップや振り幅を見事に演じてくださった」とハマり具合について語る。緊張感の続くキャラクターを演じ切った充実感を口にしていた佐々木だが、クランクアップ時には感極まり、涙を流していたという。「追い込まれるキャラクターなので、精神的にも大変だったと思います。蔵之介さんの涙を見て、そこまで思い入れを持ってやってくださったんだと、その場にいた誰もが感動しました」とプロデューサー陣も感慨深く振り返る。

歌仙役の木村多江も、キャスティング発表時に「原作のイメージぴったり!」とファンを沸かせた一人だ。壮絶な物語に飛び込む上で、佐々木と一緒に鳥栖夫妻の絆を体現したいと意気込んでいたという木村。哲雄を支え、犯罪の隠蔽工作を手伝う歌仙も敵組織から狙われる存在となるため、木村は過酷なシーンにも立ち向かっている。
こちらがお願いするのに躊躇してしまいそうな場面もドンと受け止めてくれます。本当にカッコいいです」とスタッフ陣は、木村の度胸や明るさにいつも救われるような思いがしていたという。
齋藤飛鳥&
高橋恭平(なにわ男子)の新境地
哲雄と歌仙の娘・零花役の齋藤飛鳥は、本作で俳優として大きな一歩を踏み出した。
ドラマ版では大学生だった零花だが、劇場版では刑事としてのたくましさを身につけている。刑事としてのアクションを身につけるために、自発的にボクシングジムに通い練習を重ねたという。また父親が自らに寄せる深い愛情を噛み締める場面では、ボロボロと涙をあふれさせる号泣芝居も見せている。プロデューサー陣曰く「ご本人はアクションが苦手だと言っていましたが、現場に入ってからは完璧でしたね。クライマックスの号泣シーンは、リハーサルから本気の涙を流すなど、われわれの期待を超えるお芝居を見せてくれて、カットがかかった瞬間にスタッフからも感嘆の声があがっていました」と、彼女のがむしゃらさも零花と重なった様子。

そしてなにわ男子の高橋恭平も、見事に新境地を開いている。「7年後の恭一は、落ちぶれた生活をしているという設定。ドラマでは黒髪センター分けでしたが、劇場版の撮影に際して、高橋さん自ら『髪型は、きれいではない、汚い金髪にしたい』と役のことを深く考えて提案してくれました」と前のめりの姿勢を絶賛。
「監督や蔵之介さん、多江さん、津田さんなど、周囲の俳優さんがお芝居についてアドバイスをすると、高橋さんはしっかりとそれを受け止める。とてもまっすぐで謙虚な方。本作の撮影中にも目覚ましい成長を遂げてくれました」と、高橋と齋藤というフレッシュな2人にとっても本作は転機と言えるような作品になった。
緊張感マックス!
サスペンス性とヴィランの魅力に
シビれる
劇場版の新キャストで、哲雄を執拗に追及する犯罪組織のボス・志野寛治役に抜擢されたのは、声優としてはもちろん、俳優としても飛躍している津田健次郎だ。
製作陣は「志野は、ドラマから映画に連なる物語のラスボスとなるキャラクター。振り切ったお芝居で面白い世界観を作り上げてくれると同時に、観客にとって既視感の無い、新鮮な悪役を演じられる役者を意識した」とキャスティングの経緯を述懐。「津田さんにご相談したところ、以前から実写のお芝居で悪役をやってみたいと思われていたようで、ものすごい熱量で『やりたいです』と言ってくださいました。志野が血を舐めるシーンがありますが、あれは津田さんのアドリブです。津田さんにとっての撮影初日でしたが、初日からいろいろな面白いお芝居を繰り出してくださいました。あのアドリブの瞬間、監督はじめスタッフ一同のテンションが上がりました」と証言する。

志野と強い絆で結ばれた殺し屋で、原作ファンからも絶大な人気を誇るキャラクターの窪役は、ドラマ版から音尾琢真が続投。表情ひとつで窪の恐ろしさを表現できる俳優として、音尾に白羽の矢を立てたという。劇場版では7年の年月を表現するために、音尾自ら「髪の色を変化させたい」と発案して白髪にしている。劇中では、車のボンネットに上がり、斧でフロントガラスを叩き割るという迫力のアクションにもトライ。斧を振り下ろすカットの撮影時には、激しい動きのために音尾のズボンが大きく破れてしまうハプニングも。その勢いが感じられるダイナミックなシーンとなっている。

哲雄を追い詰めていく刑事・安元浩司役を演じたのが、立川談春だ。彼は日曜劇場「下町ロケット」などでも談春とタッグを組んできた青山監督が熱望したキャスティング。安元は、哲雄が自分の運命を託そうと信頼を寄せることになる刑事だけに、それだけの人間味と重厚感を漂わせる人として、談春にオファーしたそう。製作陣は「談春さんの目力には、哲雄が屈すると同時に『この人ならば託すことができる』と思える安心感と説得力があります。監督の渾身のキャスティングでした」と自信をのぞかせる。

サスペンス性を大いに盛り上げてくれるキャラクターとなるのが、哲雄の秘密を知る協力者・大沢隼人。原作に登場する小沢からイメージを膨らませて誕生させたキャラクターだ。演じるのは、「Z世代が選ぶ2023年下半期トレンドランキング(流行った俳優・女優部門)」の第1位を獲得するなど今最も注目を集める俳優の一人となった宮世琉弥。サイコパス的な傾向を漂わせる大沢にキュートさを加え、とびきり面白いキャラクターを作り上げている。製作陣は「宮世くん自身、かわいらしさがありながら、大人びている一面があって、そのギャップが魅力だと思います。哲雄とバディになっていくキャラクターですが、大沢の放つ異様さが映画をさらに盛り上げてくれました。また、大沢のお父さんへの思いも気持ちを込めて演じてくれました」とコメント。かわいらしい被り物や真っ白なコーディネートなど、その衣装にも注目だ。
クライマックスシーンに託した希望
それぞれのトップランナーが集うことによって、バラエティに富んだエンタメ感の強いキャスティングになった。プロデューサー陣は「蔵之介さんに引っ張られる形で、他のキャストの皆さんも、ものすごく高いモチベーションで臨んでくださった」と振り返る。若手メンバーが新境地に挑む中、ベテラン陣は彼らから刺激を受け、さらに各界の才能が集まって、それぞれが培ってきたものを惜しみなくぶつけ合ってものづくりに励む様子は、未来への希望や可能性が感じられる撮影現場だったという。

『マイホームヒーロー』は、スリリングなサスペンスであると同時に、“誰にでも守りたい人がいて、それぞれの正義がある”という群像劇としての一面も持ち合わせている。哲雄は一体どのような決着をつけるのか――

「ビターでありつつ、ハッピーエンドでもない。最後の哲雄の表情を含めて、どのような終わり方がいいのかというのは、いろいろな話し合いがあった」。さらに「人間ってあらゆる側面から見つめることができるし、表裏一体なもの。決して単純なものではない」と前置きしつつ、「哲雄はある事件に巻き込まれて、必死に家族を守ろうとする。自分の守りたいものを追求していったその先には何があるのか…というドラマで描かれたものに対する答えが、劇場版で映し出されます。」と話すプロデューサー陣。撮影現場、そして本作に託した思いにも未来への希望が詰まったクライマックスシーンとなっている。