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Production note 映画化始動

“日本のトップ俳優でしかリメイクさせない”――。それが、ワーナー・ブラザース本社からエグゼクティブプロデューサー=小岩井宏悦(以下、小岩井P)に出された条件だった。
ハリウッド版『最高の人生の見つけ方』のリメイクを考えた小岩井Pは、本社から言われたこの条件を長い間乗り越えられないでいた。当時、高倉健も亡くなっており、ワーナー本社に胸を張って“この人がジャック・ニコルソンやモーガン・フリーマンのような日本の名優”と言える俳優を提示できずにいた。しかし、ある時、女性二人の物語にしたら、日本には吉永小百合さんと言う絶対的な映画界のアイコンがいる、女性二人の旅の物語にしたら日本の映画マーケットにも合うのではないか、と思いついた。しかも、吉永小百合は小岩井Pがなんとか一生のうちに仕事がしたいと思っていた憧れの女優でもある。小岩井Pは、直接姿さえ見たこともない吉永小百合の連絡先を探し求め、旧知の撮影監督を通してなんとか本人にたどり着く。ホテルの一室で吉永小百合に向き合い、「ワーナー本社は、吉永さんが興味を持ってくださるなら、日本版としての企画を開発しても良いと言っています、シナリオを作るので読んでいただけませんか、とお願いしました。人生であんなに緊張した瞬間はありません」(小岩井P)作品に興味をもった吉永は、それでは、シナリオを楽しみにしておりますと返事をし、ついに映画化が本格的に始動することになる。

2年半かけた脚本作り

ハリウッド版は男性2人が旅に出る物語で、カーレースやハンティングなど映画的なダイナミックな画を作れた。しかし、吉永演じる幸枝は家族を持つ専業主婦の女性。日本人のシニア層男女数千人規模のリサーチをしても、映画的なエピソードを作れる「かんおけリスト」のアイディアは見つからない。やはり年齢が上がってくると「自分が本当にやりたいこと」が「自分ができそうなこと」を乗り越えられないとわかる。そこで、病院で出会った難病を抱えた12歳の少女が、最後にやりたいことをやってみる、という設定にすることで女性2人が大胆な行動を起こすことになった。「そのことで、予定調和を排除出来て、予測不能な展開になった」。(小岩井P)
中でもこだわったのは、専業主婦の幸枝と会社経営者のマ子の友情という点。「これまでにも『死ぬまでにしたい10のこと』など類似作品は多いが、オリジナルの映画の一番の魅力は、立場が異なる二人の友情の部分。家族でも恋愛でもなく、生きる喜びを友情に見つけたいと思った」。二人の友情を最終到達点に、丁寧に脚本が紡がれていくことになる。
監督は大人の鑑賞に堪えるウエルメイド作品には定評のある、犬童一心監督にオファー。かねてより女性2人を主人公にした明るい物語を手掛けたかったという監督はまさに適任となった。

最高の相棒となった名女優2人

「現場でのお2人が信頼し合っていたのが、今回一番大きかったです」と小岩井Pが語るように、幸枝の相棒を務めるマ子を演じた天海祐希と吉永の信頼関係は絶大だった。なんと天海のキャスティングは吉永から出たアイディア。2001年公開の『千年の恋ひかる源氏物語』で共演している2人は、撮影当時「いつか『テルマ&ルイーズ』のようなロードムービー映画を一緒にやりましょう」と話していたとか。撮影現場では身長差がかなりある2人が、仲睦まじげに語り合う微笑ましい2ショットが度々見られた。ロードムービー要素の強い本作は、2人の壮大な旅の記録という一面も持つ。慣れない自撮り、巨大パフェへの挑戦、決死の(!?)スカイダイビングなどなど……、幸枝とマ子同様、名女優2人が本気で笑い合い励まし合いながらの撮影が続く。天海はマ子として幸枝を終始リードしながらも、大先輩である吉永へのリスペクトを常に感じさせ、撮影中2人の間には終始あたたかい空気が流れていた。

作品を彩る豪華キャスト陣

天海演じるマ子の秘書=高田役には、個性派俳優として引く手あまたのムロツヨシ。ムロは元々ハリウッド版『最高の人生の見つけ方』が「人生で一番好きな映画」と公言しており、秘書役のショーン・ヘイズに憧れていたという奇跡的な偶然が!そして幸枝の娘で家族の面倒を押し付けられる美春役に、実力派女優=満島ひかり。満島が若かりし頃の幸枝を1人2役で演じることも、話題になること必至だ。他にも毎日テレビばかり見ているぐうたらな幸枝の夫=孝道役に前川清。映画俳優ではなく歌手である前川が演じることで、この作品が求めていたポップなパッケージ感が完成した。マ子の年若い夫=輝男役に賀来賢人など脇を固めるキャストもトップクラスの豪華俳優陣が集結している。

圧巻のももクロライブ

幸枝とマ子が次々に叶えていく、少女が書き連ねた“死ぬまでにやりたいことリスト”。少女らしいピュアな願いをひとつずつ着実に実現させていく吉永&天海の姿には心打たれるが、中でも前代未聞の撮影が行われたのは、“ももクロ(ももいろクローバーZ)のライブに行く”という1項目。実はこのシーン、実際に行われた横浜アリーナでのももクロのライブ中に撮影を決行!ライブの真っ最中に、自分達の席を探すところから撮影は始まり、ももクロメンバー自らが会場の観客に語りかけるところもカメラが回る!最終的には1万2000人のももクロファンを前に、吉永&天海&ムロがももクロと一緒に踊る(!)というシーンまでを撮影しきったのだ。最後まで撮影に付き合ってくれた観客達も、まぎれもない出演者の1人1人としてスクリーンに焼き付けられている。
約2か月に及んだ撮影は京都、長崎、五島、静岡、茨城と全国各地でロケを行った。