(やられた!)と思った。
クライマックスの法廷シーンは圧巻だ。
人間の狂気、情念や家族の永遠を表現した父親役のロバート・デュバルが素晴らしかった。息子役のロバート・ダウニーJR.の抑制のきいた好演。本当に秀作で涙が出た。
父親は、町の人達だけでなく息子達にまで、「ダディ」ではなく「ジャッジ」と呼ばれている。被告席に座っていても、父は息子にとって人生のジャッジなのだ。真実のみを語ると宣誓した法廷だからこそ、厳格な父が初めて心情を語った場面に、涙が止まらなかった。
岡崎由紀子法廷は人間劇場。絆を断った父子の運命の殺人法廷に感情の渦が幾重にも入り乱れ、光と影を刻んでこの胸に迫る。
これぞ役者魂というものか、Wロバートの存在感に圧倒されながら、ぼくは真実の行方にかじりつく陪審員の一人になっていた。
ぶつかり合うセリフと、合間の緩急つけたユーモア。恐れ入った。セリフのある登場人物全員に裏打ちされたドラマがある。ああ、こんなドラマが書きたい。死んだ親父に会いたくなった。離れて暮らす息子たちに見せたくなった。
今井詔二(脚本家/「法医学教室の事件ファイル」シリーズ、「緑川警部」シリーズほか)『グラン・トリノ』に続き、父子を描いたニック・シェンクの脚本がいい。
法廷サスペンスで家族を解く、シンプルも骨太のドラマに胸を打たれた。
絶対に見て欲しい。これぞ映画! 脚本も秀逸なら、俳優達の演技も素晴らしい。先の読めないサスペンスな展開と重厚な人間ドラマが楽しめる、上質な感動作品。
福島治子ここにサスペンスの原点を見た。人間の期待と絶望が大きな波の様に、引いては押し寄せくり返す。
何度も泣いた、切なくて泣いた。そうだ、これが事件に関わった人間の心情だ。胸がつまる、高揚する、葛藤し続ける。
家族になりたい、なれただろうか。もう自分事になった。まさしく原点だ、これがサスペンスだ。
サスペンスの衣を纏った家族の物語。
一見シリアスな様相だが、ここで描かれる家族の問題はどこの家庭にも在るため、細部が丁寧に描かれるほどに共感の笑みが零れる。
誇り高き男の老いの姿を完璧に演じたロバート・デュバル。父親への愛憎半ばする複雑な心境を抑えた演技で魅せたロバート・ダウニー・JR。二人は元より、主人公の元恋人を演じたベラ・ファーミガの大人ぶりが素晴らしい!俳優たちの演技合戦に酔える映画だ。
積年の想いがあるからこそ、老い衰える親に寄り添うことは、こんなにも難しい。
父子が対峙する法廷で明らかになる真実に、「伝えられなかった言葉」「あのとき理解してほしかった気持ち」を抱えたまま先に進むしかなかったすべての親子が、自分を重ねずにはいられないだろう。
父と息子。兄弟…。家族の中での男としてのスタンスを、
これほどまで深く考え込ませた作品を観たのは、いつ以来だろう。
アイアンマンもそうだが、ロバート・ダウニーJR.は、現在、
男たちの共感を誘う最強スターだと改めて痛感した。
びっくりするくらい泣けた。法廷ものであり、父と息子の物語であり……
しかし本当の主題は「人生の後半戦について」ではないかと思う。
緊迫の法廷ものかと思いきや、Wロバート扮する父子の関係を描く感動のドラマが展開。
そのドラマ性に共感しっぱなしで思わず、自分と主人公を重ね合わせてしまう。
観終わった後、あまり連絡を取らない父親に思わず電話してみたくなる作品。
ダウニーJr.とデュバル、愛憎半ばする父子演じるこの二大ロバートの高度かつ圧巻の演技合戦に胸が熱くなるドラマティックな感動巨編!リアルで深遠な家族ドラマにスリリングな法廷サスペンスをスマートに織り込んだ娯楽性も高い秀作だ。
小林 真里(映画評論家/翻訳家)単にサスペンス性を強調した法廷劇ではない。親と子、愛と憎、裁かれる者と裁く者。
複雑な関係性を匂わせながら展開するドラマはユーモアを含みつつ、予期せぬ結末へと向かう。グッとくるラストまで目が離せない。
長男でもない、三男でもない、次男だからこそ突き刺さるドラマがあった!
絶縁ではないが親密でもない父親との関係が心の中で少し変わった2時間22分だった。
法廷劇に家族ドラマを掛け合わせた良作。Wロバートの演技合戦が見ものだが、アーマーを着なかったからかロバート・デュバルの勝利。それでも、重くなりがちなテーマを飄々とした演技とユーモアで肩の凝らない映画にしたのはロバート・ダウニーJrの演技力。
妹尾 和夫(ZIP! Showbizデスク)なんですか、この良い話は!犯した罪について判決を言い渡すとかそんな単純な裁判じゃなくて、仕事や家族やプライドや、今まで築いてきた全ての過去が問われる裁判。これをホントに傍聴してたら、どこかで傍聴記書いてただろうな。
阿曽山大噴火(裁判傍聴芸人)この映画は、親子関係をこじらせたまま大人になってしまった人々へ贈る、魂の処方箋である。非常に質の良い法廷サスペンスでありながら、子供をジャッジし続けた親と、ジャッジされることから逃げた子の関係性を、思いの外深くえぐり、そして救済する。
高殿円(作家・漫画原作者)頭脳戦が楽しめる法廷ドラマであり、小さな箱を一つずつ開けるようなサスペンスであり、それでいて想いが心に届く美しい文学だ。
幸福は伝染するといったのはスタンダールだが、スクリーンから愛が伝染し、大切な人との優しい時間が作りたくなる。