作品情報

「しぶかつ」のとんかつをいかに美味しくみせるかがこの映画の課題のひとつ。今回、九州を中心に展開する昭和37年創業の老舗「とんかつ濵かつ」に協力をいただき、スタジオには専用の揚げキッチンを設置。「二宮監督から“あの名店の味を再現してほしい”という助言もあり、お肉の中心部がピンクの柔らかくジューシーでありながら、衣も剣立ちがしっかりとした黄金色のとんかつを目指し、研究に研究を重ねました」(フードコーディネータ・小野秋さん)。撮影に使用したのは北海道産ロース50kg、カナダ産ヒレ70kg。合わせておよそ300人前! とくに、こだわりのロースは脂身と赤身の割合が美しく、サシも適度に入った上質なものを用意した。撮影中はもちろん、撮影前や後もつまみ喰いにくるキャスト&スタッフが多数出現。揚げたてのとんかつは毎日、完売御礼だったと言う。

DJプレイだけでなく「しぶかつ」でアゲ太郎たちが働く姿も見せ場のひとつ。撮影前、北村匠海さん、池間夏海さんはキャベツの千切りを、ブラザートムさんはとんかつの揚げ方の指導を受けた。「北村さんは家で料理もするそうで最初からとても上手でした。ただ、プロのとんかつ屋はキャベツを引き切りで千切りにする。そのコツがつかむまで苦戦されていましたね。池間さんは、包丁を持つのが調理実習以来とのことで、最初は包丁の持ち方からスタート。でも、自主練もたくさんしてみるみる上達。最終的には誰よりも上手に千切りできるようになっていました」(小野さん)。休憩時間にも揚げ場にいるほど、“揚げ”に魅了されたのがブラザートムさん。「台本にはないつなぎの作り方や後片付けの手順まで質問いただき、映らないところでも揚作さんを表現しようと追求されていたのが印象的。トムさんが揚げたとんかつは“トムかつ”と呼ばれておいしいとかなり好評でした」(濱かつ・山口喜一郎さん)

今回、ロケ撮影は「主人公たちの営みにリアリティをもたせたい」(プロデューサー・唯野友歩さん)との思いから、様々な制限のある中であえてオール渋谷での撮影が敢行された。渋谷に実在するクラブでの撮影はもちろん、渋谷ハチ公前や109前のスクランブル交差点、井の頭通り、公園通り、ファイヤー通りなど渋谷を象徴するスポットでロケ撮影が行われた。本物の渋谷を背景にアゲ太郎たちが走り回り、踊り、歩くことで、原作のありそうでなさそうな“渋谷ファンタジー”と現実がちょうどいいバランスでミックスされ映画『とんかつDJアゲ太郎』独自の渋谷グルーヴが生まれているのだ。

渋谷でのロケを行う一方で「しぶかつ」「室基地」「アゲ太郎自室」はスタジオでのセット撮影が行われた。「しぶかつ」は実際のとんかつ屋を食べ歩き、渋谷・円山町で愛される敷居の高くないとんかつ屋のスタイルを模索した。「ポイントはDJのターンテーブルと同じようにフライヤー(揚げ場)をセンターに置いたこと。お客さんはまさにオーディエンス。クラブのフロアとリンクしやすい構成を狙いました」(美術・宮川卓也さん)。「室基地」や「アゲ太郎自室」は細かな装飾にもこだわりが光る。「室基地は少年の頃に憧れた秘密基地の雰囲気を。アゲ太郎自室はDJと出会うことで部屋の様子も変わっていきます。細部までぜひみてほしい。アゲ太郎の部屋には遊びで、豚グッズもたくさん置いています(笑)」(宮川卓也さん)

撮影前には、北村匠海さん、伊藤健太郎さん、伊勢谷友介さんはDJプレイの練習も積んでいた。「DJ経験者の北村さんは教えることがないくらい最初から完璧でした。伊藤さんは好奇心旺盛で、今回唯一最新のCDJを使う役柄。それも楽しんで覚えていて才能があると感じました。伊勢谷さんは“まさか自分がDJ役をやるとは!”と驚いていましたが持ち前のノリと勘の良さですぐ習得されていました」(DJ/クラブコーディネーター・太田 創さん)。DJプレイの最大の見せ場となったのはラストのアゲ太郎と屋敷とのセッションシーン。ここのプレイはプロのDJが見ても圧巻の仕上がりだったと言う。「カオスパッドでのセッションは2人で合わせる練習を一度もできなかったのに見事に本番では息がぴったりで驚きました。とくに北村さんは完璧に音があったパッドの動きをしていたのが感動でした!」(太田さん)

ラストシーンのもうひとつの注目シーンと言えば、アゲ太郎のDJに合わせて踊る三代目たちのダンスバトル!? フリーキーなダンスは振付稼業air:manによるものだ。「クラブにいるみんながお互い自由で、なのに穏やかに楽しんでいる。そんな空間に出来れば! と考えて振付を作成しました」(振付・振付稼業air:man菊口 真由美さん)。三代目たちはダンスレッスンも熱心に取り組んだ。「ダンス経験のある加藤 諒さん、浅香航大さんは言わずもがな抜群。栗原類さんはひらすら練習熱心でした。前原滉さんはダンス経験があまりないとのことでしたがそれ故の爆発力がお見事でした」(菊口さん)。それぞれの個性が炸裂するダンスシーン、三代目の盛り“アゲ”ぶりは間違いなく必見!

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