美月と男子バスケ部の最悪な出会い。土屋の初日は、いきなり永久以外の3人から「これのどこが女神なんだよ!」「地味過ぎるだろ」などと散々な言われよう。怒りに震えたかと思えば、同日に4人が本気でバスケを愛していることを知り、永久から優しく頭を撫でられるという気持ちの変化が劇的な1日となった。何度も監督と言葉を交わしつつ、稲葉以外とは共演経験があるという4人のバスケ部ともすぐに打ち解け明るい笑顔を見せる土屋。「美月はまっすぐに人を応援できる子。この人が何を必要とするかを、心と心で向き合って考える子でとても魅力的です。この撮影中はバスケ部男子に囲んでもらうことも多いのですが、美月の周りに4人が集まることに説得力を持たせないといけないなって思っています」(土屋) 実は撮影前に、美月のバイト先であり原作ファンの聖地ともいわれている大阪のwords caféを訪れていたという土屋。「とても雰囲気のある素敵なカフェで行ってよかったなと思いました」と、役とどこまでも真摯に向き合う。8年振りの共演となった北村とは「匠海とは幼なじみみたいな感覚だから、不思議です(笑)」と言いながらも、次第に永久に惹かれていく美月の繊細な芝居を丁寧に演じ切っていた。

2018年3月上旬にクランクインした平川組。しかしその数か月前から、男性陣のバスケ漬けの日々は始まっていた。特に男子4人は常に一緒にいる仲間の空気を出すため極力4人で集まり、練習後は食事に行ったりなど時間を共有した。もともとバスケ経験者だったという彼らの練習風景は日を追うごとに白熱し、チームとしての一体感が面白いほどに出来上がっていった。「撮影前は朝からバスケをしていましたね。練習に行けない日は、別々に朝8時から友達を集めて練習したり(笑)。永久は一見クールですが、実はまっすぐでかわいいところもある人。永久の“バスケが大好き!”という気持ちを全面に出すことを一番に考えていました」(北村)「恭介は一番“お兄さん感”があるので、監督からも皆を包み込むような存在であってほしいと言われていました。皆でバスケ練習をする時も、恭介だったらどう過ごすのかなって考えていましたね」(磯村)「初日がバスケのシーンだったんですけど、エキストラの方々がいて“マジで試合だ!”って思えたのがありがたかったです。竜二に関しては監督から“『寅さん』シリーズを見ろ!”と言われたので、寅さんを参考に役を作っていきました」(杉野)「チームワークが出来上がっての初日は、最初なのに前からやっているような不思議な感覚。瑠衣はかわいい弟キャラですが、バスケ練習で監督にお会いした時“稲葉くんのバスケは武骨だな。でも瑠衣はそっちじゃないよね”と言われたので、もっと柔らかさを出していこうと思っています」(稲葉)そして今回、唯一バスケ未経験者だったのが小関。ゼロからのスタートとなった彼は天才バスケプレイヤー=亜哉を演じるにあたり、誰よりも早い2017年の8月から練習を開始していた。「亜哉をやるには覚悟が必要でした。8月から毎日ボールを触っていましたが、いろんな人の支えがあってクランクインまでたどり着けたことが嬉しいです」(小関)

撮影中も暇さえあれば自然とボールに触れ、練習を繰り返していた男性陣。約1か月半に及んだ撮影の最終日は、1200人のエキストラを投入してのウィンターカップ。清凌高校と、亜哉率いる鳳城高校が直接激突するクライマックスシーンだ。カメラが回る前から、コートに入るなり一斉に練習を始める彼らを一心に見つめるエキストラ。まだ本番前だというのに、シュートが入っただけで拍手や歓声が沸き起こる。実は試合のパス回しやシュートに至るまでの流れは、アクションの殺陣のように事前に決まっているもの。だがこの時点で4人はアドリブの動きも入れられるほど余裕があり、かつ誰かのパスミスも瞬時にフォローしてつなぐなど相変わらず抜群のチームワークを見せる。エキストラの反応は正直で、シュートが外れると「あ~っ!」と大きなため息。「がんばって!」などの応援が自然に湧き起こる。それに乗じるようにマイク越しで、「次は決めようか!」と笑顔でプレッシャーをかけていく監督の姿も(笑)。シーンとしては必ずしも本当にシュートを決めなくてもOKなカットもあったのだが、監督はもちろん役者陣1人1人が「本当に決めたい!」という強い思いから「もう1回お願いします!」と直訴する場面も見られた。なかでもリハーサルではシュートがなかなか決まらなかった北村が、本番になると角度のない位置から鮮やかに難易度の高いシュートを決めている姿には、一同感嘆。本番に強い北村の役者としてのポテンシャルを感じさせた。そんな客席から誰よりも熱い視線と歓声を送るのが、美月。彼女もまた自分の戦いに挑み、晴れやかな気持ちでここにいる。物語冒頭“ぼっち女子”だった美月とは、顔つき、佇まいすべてが変わっている成長ぶりを、短期間の間に土屋は見事に体現してみせていた。 ついにすべての撮影が終わりエキストラに挨拶をするキャスト陣。「皆さんとの時間を忘れない!と思って撮影していました。私にとって制服ものはこれが最後かなと思って、女優の卒業試験のつもりで臨んでおりました。全力で受け止めてくれた平川組にはとても感謝しています!」そう語った土屋の目にはうっすらと光るものが。最後は6人で深々と一礼し、熱く濃い春の日々は幕を閉じた―。

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