二階堂は、撮影前に役作りとして“スタイリングの旅”に出かけた。監督と一緒にエリカの着る服を探して、代官山から渋谷、下北沢のショップを回ったのだ。エリカの私服は、このときに買った物を中心に、二階堂本人がスタイリングしている。山﨑の方は、本人から「この作品に集中したい」と、かつらではなく地毛を自身初の金髪に染める申し入れがあった。また、恭也のドS台詞の数々は、普通なら人生で一度も口にすることのないような言葉ばかりだ。モチベーションを維持しないと、歯の浮いた台詞になってしまう。そのため山﨑は、撮影中はずっと心身共に恭也になりきる必要があった。
撮影中、一つのヤマ場となったのは、エリカが恭也に水をかけるシーンだ。台本にはもっと台詞があったが、監督は自然に出てこないセリフは言わなくていいと、リハーサルで二人に自由に演じさせながらこのシーンを創り上げた。表情と視線のやり取りで二人の想いが伝わる見事なシーンとなった。
その直後のエリカが一人トボトボと帰るシーンは実は台本にはなかったのだが、監督の意向で急遽加えられた。何度も撮り直しされ、映像だけでエリカの心の揺れを表現する素晴らしいシーンが完成した。
エリカと恭也が通う高校は、福岡の東福岡高校で撮影された。二つの校舎をつなぐ連絡通路が、学校イチのイケメンをエリカが知らなかったという設定を、説得力を持って表現している。
江ノ島デートと神戸への研修旅行は、実際にその地でロケ撮影が行われた。その他、二人が立ち寄る健のカフェは、東京の清澄白河にあるアンティークな雰囲気がお洒落なfukadaso cafe。エリカが初めて恭也に「好き」と告白する通学路は、江戸川区の北葛西に流れる新川沿いの道で撮影された。
1ヶ月という凝縮された撮影期間に、福岡と神戸と2回も“合宿”があり、スタッフ・キャストが皆で楽しく食卓を囲んで結んだ絆が、作品をより豊かに彩っている。
主題歌は、プロデューサーが「書く曲すべてが素晴らしい稀有なアーティスト」と絶賛するback numberが担当。映画の内容そのままではなく、広く誰にでもあてはまるような愛の歌、たとえば男性が愛する女性に、今まで積もった愛を結婚式で表現するような曲をという願いを完璧に叶えた形となった。恭也が心のなかではエリカに対してこんな想いを抱いていたのかと思いながら聞くと、さらに胸が熱くなる名曲「僕の名前を」が、ラストシーンの感動を際立たせる。