業界で最も成功を収め、影響力のあるフィルムメーカーのひとり。2015年に設立したアンブリン・パートナーズの会長を務めている。パーティシパント・メディア、リライアンス・エンターテイメント、エンターテイメント・ワン、アリババ・ピクチャーズ、ユニバーサル・ピクチャーズと提携し、コンテンツ制作会社を率いている。
『JAWS/ジョーズ』(75)、『E.T.』(82)、「インディ・ジョーンズ」シリーズ(81, 84, 89, 08)、『ジュラシック・パーク』(93)など、数々の大ヒット作でメガホンを取り、その累計興収は史上最高額に達している。また、これまでに、数え切れないほどの栄誉を授かり、米アカデミー賞を3回受賞している。
世界中で称賛を浴びた『シンドラーのリスト』(93)で、3回のうち最初の2回となる米アカデミー賞最優秀監督賞と最優秀作品賞をダブル受賞した。同作は、合計7部門で同賞を獲得。また、同作は、ともに最優秀作品賞と最優秀監督賞を含む英アカデミー(BAFTA)賞7部門とゴールデングローブ賞3部門での受賞に加え、数多くの主要な批評家協会賞の最優秀作品賞に輝いた。さらに、全米映画監督組合(DGA)賞も受賞した。
その後、第二次世界大戦を描くドラマ『プライベート・ライアン』(98)で、最優秀監督賞部門で3回目の米アカデミー賞を受賞した。同作は、1998年公開作品のなかで、米国興収額1位を記録。また、年間で最も多くの賞を受賞した作品の1つでもあった。最優秀監督賞に加え、さらに4部門で米アカデミー賞を受賞し、ゴールデングローブ賞ドラマ部門最優秀作品賞と最優秀監督賞を受賞。さらに、数々の批評家協会賞の最優秀作品賞と最優秀監督賞に輝いた。また、自身は再びDGA賞を受賞し、プロデューサーたちとともに、全米製作者組合(PGA)賞を分かち合った。同時に、PGAより映画産業への長年の貢献が認められ、マイルストーン賞を授かった。
また、『未知との遭遇』(77)、『レイダース/失われたアーク≪聖櫃≫』(81)、『E.T.』、『ミュンヘン』(05)、『リンカーン』(12)で米アカデミー賞最優秀監督賞にノミネートされた。これらの作品に加え、『JAWS/ジョーズ』、『カラーパープル』(85)、『太陽の帝国』(87)、『アミスタッド』(97)でDGA賞にノミネートされた。DGA賞では、同業の監督たちに認められ、今日まで最多の11ノミネートを獲得している。00年、DGA生涯功労賞を受賞した。また、1987年、映画芸術科学アカデミーよりアービング・G・タルバーグ賞、ハリウッド外国人映画記者協会よりゴールデングローブ賞セシル・B・デミル賞、ケネディ・センター名誉賞など、数々の功労賞を授かった。
作家ドリス・カーンズ・グッドウィンの「リンカーン」(中央公論新社刊)に部分的に基づいた『リンカーン』(12)を監督。同作は、米アカデミー賞12部門にノミネートされ、象徴的な16世紀の大統領リンカーンを演じたダニエル・デイ=ルイスに対する最優秀主演男優賞と、最優秀美術賞の2つを受賞した。
また、トム・ハンクス主演のサスペンスドラマ『ブリッジ・オブ・スパイ』(15)は、米アカデミー賞最優秀作品賞を含む6部門にノミネートされ、マーク・ライランスが最優秀助演男優賞に輝いた。さらに、「ジュラシック・パーク」シリーズ(93, 97, 01, 15, 18)第4弾となるコリン・トレボロウ監督の『ジュラシック・ワールド』(15/出演:クリス・プラット、ブライス・ダラス・ハワード)で製作総指揮を務めた。同作の世界興収は、16億ドル超を記録。この大ヒット作に続き、J・A・バヨナ監督による続編が、18年6月22日に米国公開予定である。
近作のドラマ『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』(17/出演:メリル・ストリープ、トム・ハンクス)で監督/製作を務めた。同作は、米アカデミー賞最優秀作品賞と、メリル・ストリープにとって21回目となる最優秀主演女優賞にノミネートされた。
68年に、短編映画『Amblin'』でキャリアをスタートした。同作で、最年少で大手映画会社と長期契約を締結するに至った。その後、「四次元への招待」の2エピソード(69, 71)、「ドクター・ウェルビー」の1エピソード(70)、「刑事コロンボ/構想の死角」(71)などのTV番組で監督を務め、TV映画「激突!」(71)で大きな注目を集めた。3年後、共同脚本も手がけた『続・激突!/カージャック』(74)で長編映画監督デビューを飾った。次作『JAWS/ジョーズ』は、初めて興収1億ドル超えを達成した映画となった。
84年、製作会社アンブリン・エンターテイメントを創立。アンブリン・エンターテイメントの旗印のもと、『グレムリン』(84)、『グーニーズ』(85)、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」三部作(85, 89, 90)、『アメリカ物語』(86)、『ロジャー・ラビット』(88)、『ツイスター』(96)、『マスク・オブ・ゾロ』(98)、「メン・イン・ブラック」シリーズ(97, 02, 12)などの数々のヒット作で、製作または製作総指揮を務めた。
10年後、ジェフリー・カッツェンバーグ、デイビッド・ゲフィンとパートナーシップを結び、初代のドリームワークス・スタジオズを創立。ドリームワークスは、高い評価を獲得し、興行的にも成功を収め、『アメリカン・ビューティー』(99)、『グラディエーター』(00)、『ビューティフル・マインド』(01)で、3年連続で米アカデミー賞最優秀作品賞を獲得した。また、ドリームワークスは幅広いジャンルの作品の製作/共同製作を務めた。その数多くの作品には、『ミート・ザ・ペアレンツ』(00)と続編『ミート・ザ・ペアレンツ2』(04)、『ザ・リング』(02)、クリント・イーストウッド監督の第二次世界大戦を描くドラマ『父親たちの星条旗』(06)と米アカデミー賞最優秀作品賞にノミネートされた『硫黄島からの手紙』(06)、「トランスフォーマー」大ヒットシリーズ(07, 09, 11, 14, 17)の第1作目と第2作目などがある。ドリームワークスの旗印のもと、監督を務めた作品に、『A.I.』(01)、『マイノリティ・リポート』『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』(共に02)、『宇宙戦争』(05)などがある。
その成功は、映画だけに留まらない。エミー賞受賞歴をもつNBC放送の長寿TVドラマ「ER 緊急救命室」(94~09)の製作総指揮を務めた。『プライベート・ライアン』での経験を携えて、トム・ハンクスとチームを組み、HBO放送のミニシリーズ「バンド・オブ・ブラザース」(01)で製作総指揮を務めた。同シリーズは、第二次世界大戦中にヨーロッパ戦線に送られた米陸軍部隊について記したスティーヴン・アンブローズの著書に基づいている。エミー賞とゴールデングローブ賞のミニシリーズ部門最優秀作品賞をはじめ、数々の賞に輝いた。その後、再びハンクスと組み、高い評価を得たHBO放送のミニシリーズ「ザ・パシフィック」(10)の製作総指揮を務めた。同シリーズでは、第二次世界大戦の太平洋戦線に出た海軍に焦点を当てた。同シリーズは、ミニシリーズ部門最優秀作品賞をはじめ、エミー賞で8部門を受賞した。
このほか、製作総指揮を務めたTV番組には、エミー賞を受賞したSyfyチャンネルのミニシリーズ「TAKEN テイクン」(02)、TNT放送のミニシリーズ「INTO THE WEST イントゥー・ザ・ウエスト」(05)、ショータイム放送のシリーズ「ユナイテッド・ステイツ・オブ・タラ」(09~11)、TNT放送の「フォーリング スカイズ」(11~15)、NBC放送の「SMASH」(12~13)、CBS放送の「アンダー・ザ・ドーム」(13~15)と「エクスタント」(14~15)などがある。さらに、エミー賞受賞歴をもつブライアン・クランストン主演のHBO放送のTV映画「オール・ザ・ウェイ JFKを継いだ男」(16)、Netflix放送のドキュメンタリーシリーズ「伝説の映画監督 -ハリウッドと第二次世界大戦-」(17)、CBS放送の「BULL/ブル 法廷を操る男」(16~17)でも製作総指揮も務めた。また、アンブリン・テレビジョンは、FX放送の「ジ・アメリカンズ」(13~)の製作を担当している。同シリーズでは、数々のエミー賞ノミネートを獲得し、マーゴ・マーティンデイルがドラマシリーズ部門最優秀ゲスト女優賞を2度受賞した。さらに同シリーズは、15年度ピーボディ賞を受賞した。
映画製作に加え、多くの慈善活動に時間と資金を捧げている。『シンドラーのリスト』で得た利益を全額使用して、ザ・ライチャス・パーソンズ・ファンデーションを設立した。また、06年に改名されたUSCショア・ファンデーション-ジ・インスティテュート・フォア・ビジュアル・ヒストリー・アンド・エデュケーションの前身であるサバイバーズ・オブ・ショア・ビジュアル・ヒストリー・ファンデーションを設立した。同インスティテュートは、ホロコーストやほかの集団虐殺の生存者や目撃者への5万5000件以上にのぼるインタビューを記録し、教育や活動のために役立つ証言や説得力のある発言を集めることに尽力している。さらに、スターライト・チルドレンズ・ファンデーションの名誉会長を務めている。