Taka(ONE OK ROCK)Special interview
『るろうに剣心』と映画シリーズ全ての主題歌を担当したONE OK ROCKの出会いは、親友、同志として深い絆で結ばれたTakaと佐藤健の関係性も含めて、ほとんど運命だったと言っていい。そして彼らが互いの理想や熱をシンクロさせ、ただひとつの高みを目指して共に突き進んできた10年は、その運命をさらに濃く深い必然へと昇華していく道のりでもあった。ONE OK ROCKはこの10年で大ブレイクを果たし、世界へと活躍の場を広げる日本のトップバンドに登りつめた。そんな彼らにとって『るろうに剣心』の主題歌が今なお特別なのは、そこに刻まれているのが彼ら自身の物語でもあるからだろう。ここでは『るろうに剣心』とONE OK ROCKのケミストリーに満ちた10年をTakaが振り返り語った、貴重なインタビューをお届けする。
- 『るろうに剣心』第一作の主題歌のオファーが来た時のことを覚えていますか?
-
すごく運命的なものがあったんですよね。もともと、僕らが前に所属していた事務所に入る時に、僕らを見つけてくださったのがSIAM SHADEのマネージャーをやられていた方だったんです。SIAM SHADEは『るろうに剣心』のアニメの主題歌を歌ってすごく売れたバンドなんですよ。でも、何年後かにそのマネージャーが病気で亡くなられて。一方、『るろうに剣心』の実写版をやるとなった時、主演を勤めることになった佐藤健と僕は、10代の頃から一緒に色んな夢を追っかけて戦ってきた同志と言っていい存在で……その同志が『るろうに剣心』をやることになった時に、健が「主題歌はONE OK ROCK以外いない」と言ってくれたんです。こうして、全ての歯車が噛み合ったのを感じました。全てが繋がった末に今、俺らがここにいるっていう。当時はまだ20代前半だったんですけど、そこである種の使命感のようなものが芽生えたのを覚えています。
- 『るろうに剣心』とONE OK ROCKの物語はシンクロしていると言えますか?
- その2つというよりも、佐藤健とONE OK ROCKと『るろうに剣心』のシンクロですかね。この3つがバーン!とハマった瞬間があって、そこで腑に落ちたというか。
- 海外でも高い人気を誇る『るろうに剣心』と、活動の場を世界に広げていったONE OK ROCKの化学反応も感じます。
- そうですね。ONE OK ROCKは『るろうに剣心』と共に歩んできたという感覚があるので、そういう意味では必然だったんじゃないかと思います。先ほど言ったように最初に歯車がガチャン!と噛み合った後は、もう進んでいくだけだったというか。どれだけクオリティの高いものを目指して、諦めることなく追求できるかっていうチャレンジ、その精神を持ち続けることだけにフォーカスしていった関係なんです。
- 一作ごとにプレッシャーは増していきましたか?
- これもシンクロと言っていいと思うんですけど、『るろうに剣心』の新作が出るたびに、ONE OK ROCKもちょうど新たなチャレンジと向き合っている段階だったんですよね。つまり、自分たちの成長と『るろうに剣心』の成長が同じ歯車で回っていたわけなんですけど、プレッシャーというよりもその2つがぶつからないように、っていうのは常に意識していました。
- 例えば今回の『The Final』、『The Beginning』のタイミングでONE OK ROCKが挑んでいた新たなチャレンジとは?
- ONE OK ROCKとして16年やってきた長い歴史を経て、次のステージにしっかり上がりたいっていう明確なテーマが最近の僕たちの中にあったんです。そのテーマをすごく大事にしながら活動していこうって。それで、今回の『るろうに剣心』の二部作を観た時に、作品のテーマと現在の僕らのテーマがびっくりするくらいハマっていたんですよ。そこに、すごく喜びを感じましたね。
- 『るろうに剣心 最終章 The Final』をご覧になっての感想をお聞かせください。オール・キャラクターが大集合したアクション・エンターテイメント作に仕上がっていますよね。
- すごく迫力があって、本当に「大集合」という言葉そのままの作品ですよね。しかも『るろうに剣心』のこれまでの3作品を超えていくスケールの大きさに、ただただ圧倒されるしかないっていう。目ん玉飛び出るかと思いました(笑)。
- (笑)主題歌“Renegades”の着想についてお聞かせください。
- 今のONE OK ROCKの心境としてリンクするものがあったんですよね。緋村剣心という人が心の中に抱えている葛藤や、時代を変えるために前に突き進んでいく、そのために剣を振るって相手を倒していく姿が。この作品の剣心は圧倒的に孤独であって、同時に優しさや寂しさも持ち合わせている。『The Final』から感じたそういう剣心の人間性にフォーカスしつつ、そこに今の僕らの気持ちや、向いている方向性をリンクさせながら書いていった曲なんです。
- “Renegades”でのエド・シーランとのコラボレーションの経緯はどういうものだったのでしょうか。
- 最初は普通にエドと曲を作ろうとしていたんです。そこでたまたま映画の話になって。彼も『るろうに剣心』を知っていたみたいで、それで一緒に主題歌を作ることになったんです。一緒に作ることになった時に僕は「まずちゃんと説明させて欲しい」とエドに言ったんですよ。今の僕らのモチベーションだったり、『るろうに剣心』に対する思いだったり。それに剣心という男がどういうキャラクターかっていうことも説明して。剣心を演じる佐藤健がいかにはまり役かっていうことも、また、健の人間性や、彼と僕がどういう関係性にあるのかっていうことも全部、エドに話した上で一緒に作ったんです。
- 『The Beginning』の主題歌“Broken Heart of Gold”の背景について教えてください。
- 僕があの映画を最初に観た時は、音やCGがまだ入っていない段階のものを大友監督に観させていただいたんですけど……すごくこう……ザワザワしたんですよね。観終わった後に。でも同時に、このエンディングに相応しい曲は何かと考えた時に、「もう、この音でしか始まらないな」っていうか、この音以外は合わないっていうイメージがすぐに浮かんだんです。だからそれを大事に家まで持って帰って……閃いた「この音」のイメージを壊さないように作りました。監督に頼んで、最後のシーンだけ切り取っていただいた映像を、それこそ何度も観ましたね。
- 『るろうに剣心 最終章 The Beginning』をご覧になっての感想をお聞かせください。全シリーズのファイナルが「始まり」で終わるという、これまでの4作品と比較するとかなり異色の作りになっている作品ですが。
-
僕は圧倒的に『The Beginning』が一番好きです。この大好きな映画に自分たちが作った曲のタイトルを入れていただけたというのにも、監督の愛をすごく感じましたし、あとやっぱり、ここで佐藤健が演じている緋村剣心がちょっともうエグすぎて(笑)……これは健にしかできなかったって、『The Beginning』を観るたびに思うんです。だから僕らはそこに寄り添って、彼の心情を掬ってあげるような気持ちで、最後に曲を届けられればいいなっていうのをイメージして作ったのが“Broken Heart of Gold”です。
- 特に素晴らしかったシーンは?
- 終始グッとくる映画ですからね、『るろうに剣心』のシリーズに関しては。だから「ここ」という感じでは摘めないんですけど、やっぱり剣心がシリーズ1から2、3、4にたどり着くまでの一番大事な部分ですし、剣心という男を理解するための一番大事な作品だと思うので、お客さんにも色んな角度から観て欲しい作品です。
- 物語の最後に流れる“Broken Heart of Gold”で、ONE OK ROCKとして『るろうに剣心』の最後にどんなイメージを付け加えたかったのでしょうか。
- あれは剣心にとっての始まりのシーンでもあるので、けっして物語の単なる終わりではないんですよね。だからここからまた1に戻って2、3、4と観てねっていう気持ちですよね。完結を迎えて、ただ寂しいだけで終わってほしくなかったというか。エンディングの“Broken Heart of Gold”を聴いたらもう一度、第一作の『るろうに剣心』に立ち返ってほしい、あのかっこいい剣心、笑っている剣心にもう一度出会ってほしいなって。剣心であり、佐藤健でもある、彼らの性格をちゃんと一周して繋ぎたかったんです。
- ちなみに第一作『るろうに剣心』から『The Beginning』の5曲の主題歌を作る上で、大友監督や佐藤さんから作品の世界観の説明や、サジェスチョンのようなものはあったんでしょうか。
- 全くなかったです。大友監督は初めてお会いして、第一作を観させていただいた時に「じゃあ、あとはお願いします」っていう感じだったので(笑)。僕もびっくりしましたし、初めてのビッグ・タイアップだったので、こんな感じでいいのか?って最初は思ったんですけど。今思い返せば僕らのことをちゃんと見て、研究していただいて、信頼をしていただいたんだなってわかりますよね。一方の健は同志というか親友というか、ずっと一緒にいるので……若干、夫婦みたいな(笑)。だからもう、改って何か説明をされるようなことは特にないんです。彼が頑張っているから、俺も頑張るっていう。それに彼が好きなものは僕ももうわかっているので、そこにフォーカスを絞っていくだけでしたね。
- ハードなロック・チューンの“Renegades”と美しく壮大な“Broken Heart of Gold”は対極的な2曲ですが、これまでも2部作の場合は常にこうしたコントラストを意識してきましたか?
- 『るろうに剣心』から『京都大火編』、『伝説の最期編』までの3作は続くことが大前提だったので、僕の中ではそこまで意識してなかったですね。ただ今回の2作は僕としては別物として捉えていて、特に『The Beginning』に関しては全く違う映画だと言っても過言ではないくらいなんです。だからやっぱり、曲を書く上で「侍ムービー」としての『The Beginning』と、「アクション・エンタテイメント」としてのこれまでの『るろうに剣心』をちゃんと分けたいという気持ちがあったんだと思います。
- 『The Beginning』の“Broken Heart of Gold”で『るろうに剣心』との物語を終えたONE OK ROCKのこれからの展望とは?
- 『The Beginning』で描かれた幕末、彼らが戦ったああいう時代があったからこそ今があるわけじゃないですか。だからきっと剣心の願いもまた、現在に届いていると思うんですね。剣心の願いが届いたのが、今僕らが生きているこの現実の世界なんだ……っていうか。だからこれからは僕らが、この現実の世界をどう変えていけるかっていう勝負だと思っているんです。いろんなことに対して臆することなく、剣心のスピリットをリスペクトしながら、時代を変えるために剣を振るうじゃないですけど、僕らの場合は音楽、マイク、ギター、ドラム、ベースでもってやっていくっていうことだと思っています。
- 新しいステージというイメージですか?
- セカンド・ステージ、という感じですかね。ここからが自分たちの、バンドとしてのストーリーも完結に向かっていくステージなんじゃないかなって。
- 最後に、ONE OK ROCKにとっての『るろうに剣心』とは。
- 共に歩んできた同志です。これは健に対しても、剣心に対してもそうですし、そこはふたつでワンセットなんですけど。本当に……ありがとう、っていう感じです。