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staff

ディレクター神山健治

背景美術スタッフとしてキャリアをスタート。
『攻殻機動隊 S.A.C.』で監督とシリーズ構成を兼任した。
続いて『精霊の守り人』でも再び監督とシリーズ構成を兼任。オリジナルTV シリーズ『東のエデン』では原作も務め、『009 RE:CYBORG』においては初のフル3D 劇場作品を監督した。

INTERVIEW

ちょっとだけ行動力のあるヒロインが開く物語の扉

―オリジナル脚本による長編アニメーションは決して多くはありません。企画の発端を教えてください。

神山 日本テレビの奥田誠治プロデューサーから「自分の娘に観せたい映画を作ったらどうだろう」と声をかけられたのがきっかけです。自分がこれまで手掛けてきたSFアクションやハイファンタジーの企画を持ちかけられることが多い中、違うものを作ったらどうだろうという奥田さんの一言はとても新鮮で、そこから「キャラクターの個人的な物語」にフォーカスした企画を練り始めました。

―森川ココネという主人公はどうやって生まれたのでしょうか。

神山 ココネはごく普通の高校生です。特になにかが得意だったり、不得手だったりするわけではないです。ちょっとだけ行動力があることで、彼女の前の物語の扉が開くことになります。これは「ココネだから開いた」ということではなく、映画を見ている誰にでも起こりうることだと思って作っていました。誰もが思っている「こんなふうに行動できたらいいなぁ」ということを実行してくれるココネを通じて、「意外と行動できちゃうものだよ」という気持ちになってもらえるとうれしいですね。

―夢と現実を行ったり来たりする構成が特徴的な作品です。

神山 もともとあったアイデアを夢という形に落とし込むまでにかなりの時間がかかりました。最初はもっとSF要素の多い内容で、ストーリーもまったく違っていました。一旦はSF要素をすごく減らして、もっと現実寄りの物語にしたこともありました。でも、そうしてみると映画が地味すぎて、どうも飛躍が足りない。そんな紆余曲折の中から、現実と、それと重なり合うような夢の世界の2 つの物語を並行して見せていくというアイデアを思いつきました。

―ココネは夢の中で、もうひとつの物語を体験します。

神山 今の10代、20代をみていると、みんな明るくて、ストレスがなさそうに見えます。お互いの摩擦係数をすごく下げて、それで快適に過ごしているように見えます。そんなふうにストレスなく生きるために、ストレスをどこかにためているんじゃないか。そのはけ口があるとするなら、眠っている時の夢の中はそういう場所のひとつなのかなと、思います。ココネも夢の中で、自分でも忘れていた物語と再会して、それは彼女の中の新しい発見につながっています。

―オリジナル企画ならではの脚本作りの苦労を教えてください。

神山 オリジナル企画は「この作品の魅力になる」と思った部分が、お話を作る上での弱点になったりもします。今回はココネという主人公が自分の物語をみつけていく物語。その周囲にはどういうキャラクターがいたほうがいいのか、自分の物語をどうやって認識するのか。そこが最終的に決まるまで、試行錯誤を繰り返しました。さらに、いかに必要なことをコンパクトに見せるのか、観客が直感的にわかることができるシチュエーションを作るのかの工夫も必要でした。

―この映画はどんな人達に見てもらいたいと考えていますか?

神山 まずココネと近い年代の人ですね。いまは個人主義が当たり前になっていますけれど、個人の意識の中には、実は他人がいるんですよね。たとえば、家族の心のなかにいる自分、自分の心の中にある家族。普段は意識していなかったそんな心の中の他人を意識すると、ココネのように、それまで自分が気づいていなかった宝物がそこに眠っていることに気づけるんじゃないかと思います。それはココネの世代の人だけではなく、ココネのお父さん(森川モモタロー)の世代も同じでしょう。映画をあまり見ないといわれている、その世代の男性にも楽しんでいただければと思います。

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