❖撮影エピソード③
最高のロケーションを求めて仙台から北九州へ、全国各地でロケを敢行
撮影はオールロケ。横浜市、東京都内、仙台市、つくば市、横須賀市、京都、北九州市、北から南まで全国各地で撮影は行われた。光希と遊が通う高校は仙台の尚絅大学のキャンパス、部活のテニスシーンは仙台大学のテニスコートを借りて撮影している。また、遊が建築の道を目指している設定や、建築科のある京都の大学へ進学する設定は原作と同じで、離ればなれになった光希と遊が久々の再会するシーンは京都工芸繊維大学のキャンパスで撮影が行われた。遊は茶髪から黒髪へ、光希はロングヘアからボブへ、見た目の変化は、2人が離れ離れになっていた時間を物語っていた。会いたくてどうしようもなくて突然に遊を訪ねた光希だが、女子学生と歩いている遊を見つけて思わず隠れてしまう。けれど、遊は光希を見つけ──遊と再会した嬉しさと知らない女の子といたショック、複雑な光希の心情を桜井は繊細に演じてみせた。その後、遊は光希を見送るために一緒に駅へ向かう。駅のホームのベンチでは3ページの会話を撮影していく。もちろん長回しだ。場所は嵐電が通る宇多野駅。電車がホームに入ってくるタイミングに合わせて撮るため、チャンスは1時間に数回。限られた時間と外せないタイミングのなかで、互いに本音を語る光希と遊。気づけば2人とも瞳が潤み、セリフを言い終えた後の沈黙、心臓の鼓動が聞こえてきそうなほどの空気感、何とも切ないシーンがカメラに収められた。その後、想い出作りに2人が向かった旅先は原作でも描かれている北九州だ。ロケ地となったのは、レトロなカフェ門司港茶寮、日本を代表する建築家である磯崎新が手掛けた北九州市立中央図書館などだ。そんな旅の道中は2人だけの時間、2人だけの世界観を出すために、iPhoneで撮影している。それも廣木監督のこだわりだ。そして旅の終わりに2人が訪れたのは、イタリア建築界の巨匠アルド・ロッシが建設したプレミアホテル門司港。港と街並が見渡せるロマンチックなロケーションのなか、光希と遊の恋のクライマックスに臨む桜井と吉沢は、いつになく緊張しているように見えた。約2ヵ月間(2017年11月20日~2018年1月9日)、2人が光希として遊としてどう生きてきたのか、勝負の芝居場であり、桜井も吉沢もそれぞれが本気の涙を流した──。廣木監督の演出をうけた若手俳優たちが見る見る成長していく、その成長を垣間見られるシーンだった。