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production notes

超人気少女コミックをリアルなラブストーリーに

本作の企画は、プロデューサーが渋谷の街に掲出された、「オオカミ少女と黒王子」の単行本の広告に目を奪われたことから始まった。キャッチーなタイトルが頭から離れず、すぐに入手して読んだところ夢中になり、さっそく権利元に映画化の打診をしたが、既に数社からオファーが来ていたという。無事にコンペティションを勝ち取り、台本作りと並行して、監督は廣木隆一に依頼された。入口となる設定はインパクト重視だが、そこから先は地に足のついたドラマにしたいというヴィジョンが、プロデューサーと一致したのだ。廣木監督は、主人公二人の会話劇を中心に、クスッと笑えてドキドキして、最後は心に響くラブストーリーが撮りたかったという。原作の八田鮎子からは、別冊マーガレットの編集部を通じて、楽しみにしているというリアクションが届いた。

新たな挑戦を受けて立った、主演の二人

主人公の佐田恭也役にと、ターゲットのティーンの女子から絶大な人気を誇る山﨑賢人にアプローチすると、偶然にも山﨑のマネージャーが原作を読んでいて、彼に恭也を演じさせたいと思っていたと願ってもない答えが返ってくる。爽やかな役が多かった山﨑に、あえて真逆の役をやらせ、ステップアップさせると共に、今までにない代表作を作りたいと願っていたという。観客にヒロインの目を通して物語に入ってもらうために、主演女優は、“厳しい”目を持つティーンの女子に好かれなければならない。二階堂ふみの演技力なら、彼女たちも納得するだろう。今まで様々な難役を引き受け、演技派としての地位を築いた二階堂に、今こそ篠原エリカという、ごく普通の女子高生を演じてほしいというプロデューサーの提案に、二階堂も快諾した。

物語に厚みを加える、恭也を取り巻く3人の男たち

恭也と対立する神谷望には、ヒョロっとした男と闘っても恭也のよさが出ないと、ガッチリした体格が求められた。憎まれ役には高い演技力も必要なことから、鈴木伸之の名が挙がった。鈴木は「危うい感じでやってほしい」という要望に悩み、監督と話し合いを重ねたという。振り向いてくれないカッコいい男と、いつも側にいてくれる優しい男の間で揺れる。そんな女子にとっての永遠のテーマの片方の役目を担う日下部憂役は、吉沢亮に託された。これまでは元気な役柄が多かった彼もまた、新境地に挑んだ。 恭也の親友役の健には横浜流星がキャスティングされた。原作者・八田鮎子からの唯一の願いは、「(日比谷)健くんはとにかく元気キャラにしてほしい」ということだった。溌剌として礼儀正しく、「まさに健がリアルにいたらこういう人だね」と製作陣の満場一致で決定した。

「この人以外は考えられない」とプロデューサーが粘った、親友役とドS姉役

エリカとのシーンがほとんどの三田亜由美役は、二階堂とタメを張れる演技力と、母のような包容力が必要だ。女子の共感ポイントの高い大事な台詞も多い。製作陣は門脇麦しかいないと、ひたすら彼女のスケジュールがあくのを待ち続けた。さらに佐田怜香役は、背の高い恭也を超えるドSぶりがサマになる女優と考えると、菜々緒以外に考えられなかった。撮影は2日だけにも関わらず、本編ではさすがの存在感を見せつけた。手塚愛姫と立花マリンの役は、女子高生にリアルに「あの子たちにはかなわない」と思わせなければならない。オーディションが開かれ、文句なしにクラスで一番イケてるグループの女子に見える、池田エライザと玉城ティナが選ばれた。

主演二人のこだわりの役作りと、監督と創り上げた名シーン

二階堂は、撮影前に役作りとして“スタイリングの旅”に出かけた。監督と一緒にエリカの着る服を探して、代官山から渋谷、下北沢のショップを回ったのだ。エリカの私服は、このときに買った物を中心に、二階堂本人がスタイリングしている。山﨑の方は、本人から「この作品に集中したい」と、かつらではなく地毛を自身初の金髪に染める申し入れがあった。また、恭也のドS台詞の数々は、普通なら人生で一度も口にすることのないような言葉ばかりだ。モチベーションを維持しないと、歯の浮いた台詞になってしまう。そのため山﨑は、撮影中はずっと心身共に恭也になりきる必要があった。撮影中、一つのヤマ場となったのは、エリカが恭也に水をかけるシーンだ。台本にはもっと台詞があったが、監督は自然に出てこないセリフは言わなくていいと、リハーサルで二人に自由に演じさせながらこのシーンを創り上げた。表情と視線のやり取りで二人の想いが伝わる見事なシーンとなった。その直後のエリカが一人トボトボと帰るシーンは実は台本にはなかったのだが、監督の意向で急遽加えられた。何度も撮り直しされ、映像だけでエリカの心の揺れを表現する素晴らしいシーンが完成した。

福岡と神戸への“合宿”で一致団結したスタッフ・キャスト

エリカと恭也が通う高校は、福岡の東福岡高校で撮影された。二つの校舎をつなぐ連絡通路が、学校イチのイケメンをエリカが知らなかったという設定を、説得力を持って表現している。江ノ島デートと神戸への研修旅行は、実際にその地でロケ撮影が行われた。その他、二人が立ち寄る健のカフェは、東京の清澄白河にあるアンティークな雰囲気がお洒落なfukadaso cafe。エリカが初めて恭也に「好き」と告白する通学路は、江戸川区の北葛西に流れる新川沿いの道で撮影された。 1ヶ月という凝縮された撮影期間に、福岡と神戸と2回も“合宿”があり、スタッフ・キャストが皆で楽しく食卓を囲んで結んだ絆が、作品をより豊かに彩っている。

映画全体を包み込む感動の1シーンとなった主題歌

主題歌は、プロデューサーが「書く曲すべてが素晴らしい稀有なアーティスト」と絶賛するback numberが担当。映画の内容そのままではなく、広く誰にでもあてはまるような愛の歌、たとえば男性が愛する女性に、今まで積もった愛を結婚式で表現するような曲をという願いを完璧に叶えた形となった。恭也が心のなかではエリカに対してこんな想いを抱いていたのかと思いながら聞くと、さらに胸が熱くなる名曲「僕の名前を」が、ラストシーンの感動を際立たせる。

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