PRODUCTION NOTESプロダクションノート

2人の出会いが描かれる
国内ロケ

 帰国して約1週間後に再開された、東京をメインとする国内ロケ。ハードなフィンランドの撮影を乗り越えてきた連帯感は大きく、現場は和やかムード。2人の出会いのシーンが、ようやくここで撮影される。撮影の順番が逆になったことについて橋本監督は、「お2人は本当に大変だったと思います。でもフィンランドという舞台に放り込まれたことで、逆に覚悟が決まった。変に構えずに勢いでやれたのはよかった」と語る。

 「声出せよ!声!」と悠輔に言われた美雪が、「助けて!」と大きな声を出すこのシーンは重要だと監督が指摘する。「子供の頃からいろんなことを諦めてきたけれど、心の奥に『なんで私だけ』という悔しさを抱えていた女の子が、本当は誰かに助けてほしかったのだと、声に出すことによって気付き、物語が動き始めます。」

 余命宣告をされるヒロインと言えば、どうしてもか弱い女性を想像しがちだが、悠輔に出会ってからの美雪はとにかく前向き。100万円と引き換えに恋人になってくれるように持ち掛ける、一見すると現実離れした設定のシーンも、美雪の必死さがかわいらしく、「クスクス笑ってもらえるようなシーンになればいいなと思っています」という監督の狙いは的中する。

 対する一貫して不愛想で、見ようによってはキレているようにも見える悠輔の態度もワイルドで女心をくすぐるに十分。登坂、中条、監督の3人でシーンごとに話し合う時間がもたれるのも日常で、「ここの美雪の距離、近すぎないですか?」(監督)「俺はうれしいですけどね(笑)」(登坂)など、リラックスしたやり取りも微笑ましい。

 美雪が初めて悠輔の家を訪れるシーンでは、特に入念なリハーサルが行われた。監督は悠輔の妹=初美が美雪に嫉妬をするシーンについて、「少女漫画のような毎日を楽しんでいた中で、自分が予想していなかったことが起きて余計にうれしい感じ」などと丁寧に中条に美雪の心情を説明。テンションの上がった美雪が鍋の具材に「シイタケかわいい〜!」などと次々に語りかける(?)台詞も脚本には無く、スタッフも思わず吹き出す。カットがかかった後、中条も「酸欠になりそう!」と思わず笑顔。また、美雪のファッションにも注目。悠輔に出会う前の美雪はメガネ姿で、かわいいがどこか垢抜けないいでたちだったが、恋をしてどんどんキレイになっていく様子がまぶしく映し出されていく。

 美雪を送って行く悠輔が、彼女に渡すガラスの塊は、「ガラス職人の方に作ってもらいました」と監督が説明する。「卵のような形にしました。生まれる前ということが象徴的なのと、両手でぎゅっと持てるのがお守りのようで、この物語に寄り添ってくれたと思います。」-オレンジ-』が大ヒットしていた橋本光二郎が起用された。

 国内ロケでも登坂の走るシーンは多い。偶然訪れた病院で、田辺誠一扮する若村から初めて美雪の病状を聞いた後、これまでの想いがあふれ出すように走り出す悠輔。その後、美雪と初めて出会った橋の上での悲しい絶叫──。

 「美雪のことしか考えられない状況だったと思うので、僕自身それだけを考えて走りました。橋の上でのシーンは、監督から“悠輔として考えてください”というパスをいただいたので、美雪への想いだけを考えて演じることができました」と登坂は振り返る。国内ロケは3月いっぱいまで続いた。