プロダクションノート

ジョシュ・シュワルツは弱冠26歳で、全国ネットの1時間ドラマを手がける最年少のクリエーターとなった。南カリフォルニア大学に入学した彼は、初めて南カリフォルニアの生活に触れる。そして2002年、映画「チャーリーズ・エンジェル」、テレビシリーズ「Fastlane」、「The Mountain」などに携わったワンダーランドという会社のマックGステファニー・サヴェージに出会う。その運命的な出会いから、シュワルツはマックGのニューポートでの生い立ちを参考に、また彼自身が外部の人間として見たオレンジ・カウンティの生活観を組み合わせ、「The OC」を生み出した。


ボブ・デラウレンティスは、テレビ業界で20年のキャリアを持つベテランで、最も有名な作品はTVシリーズ「プロビデンス」。その彼が製作総指揮として「The OC」に参加することになった。シュワルツと協力し合い、デラウレンティスは脚本家が仕上げる物語を日々まとめていった。このすばらしく才気あふれるチームに、さらに人気テレビシリーズ「SEX and the CITY」や「Gilmore Girls」、「サンフランシスコの空の下」の脚本を書いたアラン・ハインバーグが共同製作総指揮として加わった。


「The OC」の舞台であるニューポート・ビーチの一番の特徴の一つは立ち並ぶ豪邸。それらの多くは太平洋を望める切り立った絶壁に建てられている。そのすばらしい家々を見ると、こんな質問がわき上がる。“一体、どんな人が住んでいるんだろう。”“どんな暮らしをしているんだろう。”

「The OC」の登場人物たちのドラマを追うことで、この興味深く、複雑な世界に招かれ、疑似体験ができる。またその風景を見ることでも、そこに暮らす人々の気分や雰囲気に触れられ、ニューポートでの青春を体験することができるのだ。

最も印象的かつ象徴的なのはコーエン宅だろう。実物はマリブにある。しかし実際のそのマリブの家には、トレードマークとなっているプールハウスがない。第一話を撮影するために建設チームが間に合わせでプールハウスを裏庭に建てたが、撮影後それは解体された。その後の課題はどのように撮影スタジオに、それらを再現するかだった。これは非常に難題だったが、腕のいいプロダクション・チームが挑み、見事コーエン宅とプールハウス、そしてプールを完成させた。

コーエン一家の象徴となるようにデザインされ、建てられたセットは、それ自体が1つのキャラクターとしての機能を果たしている。コーエン宅のセットは一家がオープンで陽気で、誰もが憧れる家族であることを示すように設計された。天井が高く、明るくて広々とした内装。扉で仕切られていない一階は、隠し事のない家族関係を表すのに不可欠だった。裏庭へのドアは常に開かれていて、すべての人を温かく迎え入れてくれそうな雰囲気を醸す。つまり、コーエン家での食事や集まりに参加したい人は拒まれることがないのだ。

シーズン中、コーエン宅にはより多くの空間や色彩が加えられ、変化していく。セット装飾を担当したシェール・レドウィズは目標として、“ニューポート・ビーチの世界とは少し異なる雰囲気でサンディキルスティン夫妻の個性を反映したような色合いにしたい。つまり、彼らはベージュ一色の世界には似合わないってこと。登場するすべての子供たちもね”。十代の少年少女たちは自分の部屋を個性的に飾るもので、特にこのドラマの登場人物たちの部屋は毎週数多くの人に見られる。したがって彼らの部屋は、セット・デザイナーと脚本家たちが設定を構築するうえで、入念に考え抜かれた。

例えばマリッサ・クーパーは一年の間に数多くの変化を経験する。それはセカンド・シーズンになっても続く。マリッサの最初の部屋はニューポート・ビーチの裕福な環境で育った少女の純真さを表している。フランス人形に、自身や友人たちの写真のコラージュ、花柄のベッドカバー、子供のころからのスクラップブックや記念品など。彼女は自分の理想通りの生活を送り、自分になじみのあるものに囲まれて暮らしていて、家族も円満であることを示している。

両親が離婚した後、マリッサは新しい家に越すが、それは彼女の不安定な状態を象徴している。自分の空間も十分にない小さなアパートで父親と貧しい暮らしを始めるのだ。レドウィズによると、ジミー・クーパーのアパートを造るうえでイメージしたのは、“取り壊されそうな建物”だった。セスサマーが彼女の部屋を大改造して驚かせた時、マリッサは自分が大切に思われていると感じ、友人に対しての親しみや独りじゃないということを感じた。

3度目の引越しはセカンド・シーズンの新しい家。レドウィズが考えたパリ風の内装は、マリッサの心理状態を表している。レドウィズの狙いは、その部屋がジュリー・クーパーによってデコレートされたように見せること。そうすることでジュリーがマリッサの人生に再び関与するようになったことをより強く印象づけることができる。ジュリーは、マリッサの行動に口を出し、彼女が上流階級の出で、住居は誰もが憧れる豪邸だということに気付かせようとしているのだ。

またレドウィズはマリッサの3つ目の部屋に鳥かごを置いた理由として、十代の若者が抱く、捕まって自室に閉じ込められた囚人のような気持ちを象徴するためだと語った。マリッサは自分の部屋にいることに対して、自分自身への違和感と同等のものを抱いているのだ。

一方、セス・コーエンの部屋は第一話から変化がない。彼の部屋はオタク的な彼の個性を反映している。彼の趣味は、あからさまに視聴者に提示される。子供のころから大事にしている馬のオモチャ(キャプテン・オーツ)や帆船、マイナー音楽への愛情など。彼の純粋さは彼の部屋の中核を担っている。本質的に子供のようなセスは、幼いころから持っている家具を大事に使っているのだ。

制作にとりかかった当初から、参加している全員が役にぴったりの俳優を見つけることが重要だと、重々理解していた。キャスティングのベテラン、パトリック・ラッシュはこう語る。“ピーター・ギャラガーサンディ・コーエン役に興味を示した時は、興奮や喜び以上の気分になった。”

シュワルツマックGサヴェージが立ち合う中、ピーターが本読みにやって来た。その時シュワルツが“僕の脚本を読んだ、今までで一番の有名人だ”と言ったのをラッシュは記憶している。ピーターは部屋に入って来た瞬間にサンディ役に決定した。そしてキルスティン役のオーディションにやって来たケリー・ローワンについてラッシュはこう話す。“彼女はシュワルツの脚本を信頼していて、皆が知っているような有名女優なのに、お高くとまってなく、すぐに惚れ込んだ。彼女はまるで新人のようにフレッシュで、興味深いアイデアを出してくれる。”

ライアン・アトウッド役を見つけるのは難題だった。ラッシュによれば、製作陣は完璧なライアンを見つけるために方々を当たったそうだ。そしてある日彼のもとにワーナー・ブラザースより連絡があった。他のドラマのオーディションを受けたが、落ちてしまった俳優がいるとのこと。興味を惹かれたラッシュは、さっそくあくる日彼をオーディションに呼んだ。その時の状況をラッシュはこう話す。“やって来たベンジャミンは、ルックス的にはシュワルツが思い描いていたような感じではなかったが、今まで見たことがないような独特の雰囲気を持っていた。ライアンというキャラクターは少し自分を見失っていて、謎めいた危険な感じのある少年であり、ベンジャミンはそれらの性質を全て兼ね備えていた。”

ラッシュはまたミーシャ・バートンも独特の個性を放っていたと語る。製作チームは会ってすぐ彼女に目をつけたらしい。マリッサというキャラクターは、ラッシュの言葉を借りれば、“虚飾の生活にハマりこんで抜け出せずにいる、実年齢より大人びて見える少女”である。ミーシャは見ての通り、とても美しい少女で、しかも非常に大人っぽく、製作者たちが求めていたものをすべて持っている、役にぴったりの16歳だった。

興味深いことに、アダム・ブロディは当初ライアン役のオーディションに来ていた。しかしキャスティングのトップがセス・コーエン役で本読みをしてみてくれと頼んだ。ラッシュは言う。“アダムはすばらしい俳優だと気付いていたが、ライアン役にはそぐわないと思った。それにセスの役に、アダムはハンサムすぎることにも悩まされた。シュワルツの前で彼がセスのセリフを読んだ時は傑作だった。うまくいかなかったんだ。アダムは脚本を無視して勝手なことをして、シュワルツの機嫌を損ねた。”

“しかし数週間たってもセス役は見つからず、僕はシュワルツに、もう一度アダムにチャンスをあげる気はないかと聞いた。彼はためらったものの、結局了承した。”と、ラッシュ。“アダムは若き日のトム・ハンクスを思わせ、僕は彼が才能にあふれていると感じた。”

レイチェル・ビルソンもまた興味深い経緯で役を得た。当初、第一話の段階で彼女のセリフは“キモい”、“トイレ行こう”、“彼、カワイイ”の3つだけだった。しかし彼女の信じられないほどの魅力と個性によって、サマー・ロバーツは憎めないキャラクターとなった。ラッシュは言う。“彼女には‘功労賞’をあげたい。何度もオーディションに足を運んだからね。そしてそのたびに上達し、面白くなっていった。”

意地悪なジュリー・クーパー役のオーディションには極端に整形した人や日焼けしすぎた人たちばかりが集まったとラッシュは語る。“メリンダ・クラークはジュリー役にユーモラスな一面を加えた。また非常に憎たらしく演じ、作品を盛り上げた”と。


そういうわけで...“OCへようこそ”!

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