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岡田惠和[ 脚本 ]

Interview

岡田惠和[ 脚本 ]

(「ひよっこ」『8年越しの花嫁 奇跡の実話』)

── 楽曲をもとにした映画と聞いて、どう思われましたか?
 一時だけのヒット曲ではなく、後世にずっと残っていく曲でないと、この企画は成立しません。そして映画の最後にその歌が流れることが約束されている企画ですので、どういう関係の2人のどんなストーリーが一番しっくりくるのか、かなり考えました。中高生は憧れが持てるように、そして大人の人たちにも共感してもらえるように、とにかく恋におちていく2人が、かわいく見えたらいいなと思いながら書いていました。
── 「雪の華」の歌詞のどこからイメージを膨らまされましたか?
 ハッピーエンドなのか別れたのか、聴く人によっていかようにもとれる歌詞です。幸せなワードが並んでいて、ある意味力強いのですが、それが哀愁を帯びたメロディにのると、何かあると思わせる不思議な効果をかもし出します。「雪」という単語も、喪失感を象徴していますしね。「もし、キミを失ったとしたなら」という切ないフレーズもあり、ハッピーなだけの物語では、この歌のありように合わない。悩んだ結果、始まった瞬間から終わりが来ることが決まっている“期限付きの恋愛”に行き着きました。
── 美雪の憧れの地に、フィンランドを選ばれた理由を教えてください。
 タイトルを聞くと、誰もが雪の降る寒い地域での物語を連想しますよね。でも、このラブストーリーの舞台として、あまり辛そうな場所にはしたくないと考えた時、北欧が浮かびました。何と言ってもオーロラが、この歌の風景に合うのではないかと。カフェや教会など、街並みもかわいいですしね。
── この物語での“雪の華”とは何でしょうか?
 ヒロインの心のありようですね。彼女は、雪というのはきれいなだけではなく、儚く消えてしまう悲しいものだということをわかっています。同時に、次の年にまた好きな人と一緒に見ることができたなら、それはきっと楽しい瞬間になるのだろうなという華やかな気持ちも抱いています。“華”という漢字が大事ですね。植物の“花”だと必ず散ってしまうので、雪と一つになると悲しすぎます。そういうところも、作詞として優れているところだと思いました。
── 主演の2人のキャスティングはどう思われましたか?
 ラブストーリーのほとんどは、2人が立ち向かう障害として、第2第3の人物が現れるのですが、これはほぼ2人の物語なので、今の時代には新鮮に観てもらえるのではないかと思います。ただその分、主演の2人の背負うものは大きい。皆がこの2人なら観てみたいと思うような人でないと、作品として成立しません。登坂広臣さんと中条あやみさんに決まった時、スタープログラムが実現したとうれしかったですね。
登坂さんには、悠輔なりに人生を背負って、ちゃんと地に足をつけて生きている感じを出してもらえればと思いました。いつもはステージで輝いている方ですが、今回は地上に降りて来てほしいなと。中条さんには、美雪の覚悟を決めた時の強さを、ためらわずに演じてほしいと思いました。とはいえ、お2人には全く心配はなかったです。
── 映画をご覧になる方へ、メッセージをお願いします。
 すごくシンプルに言うと、諦めないで勇気を振り絞れば、きっと何かが起きるという物語です。観た方が自分の可能性を信じられる映画になったらいいなと願っています。こんな出会いが現実にもあるかもしれないと思うだけで、幸せな気持ちになれる。それがフィクションの力であり、ドリームを届ける映画の役割だと思っています。あとはやはりラブストーリーですので、悠輔と美雪に思いっきり感情移入して、ハラハラしながら2人の恋の行方を見守っていただけたら、うれしいですね。

Yoshikazu Okada

1959年生まれ、東京都出身。雑誌のライターを経て、1990年にドラマ「香港から来た女」(TBS)で脚本家デビュー。繊細なタッチの物語世界とポジティブなキャラクター造形、会話劇で幅広いファン層を獲得。多彩な作風で連続ドラマを中心に、映画、舞台などの脚本を手掛けている。近年の主な作品としては、テレビドラマでは「最後から二番目の恋」(12/CX)とその続編(14/CX)、「泣くな、はらちゃん」(13/NTV)、連続テレビ小説「ひよっこ」(17/NHK)、「最後の同窓会」(17/EX)、「この世界の片隅に」(18/TBS)、映画では『いま、会いにゆきます』(04)、『世界から猫が消えたなら』(16)、『8年越しの花嫁 奇跡の実話』(17)などがあり、幅広い世代に愛されている。

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