あの木村拓哉が、三池崇史監督とタッグを組む!日本を代表する表現者ふたりが遂に顔を合わせる『無限の住人』は、破格のエネルギーに満ちあふれた〈世界映画〉と呼ぶべき一作だ。
望んでもいないのに、不死身の身体にさせられた侍、万次(まんじ)。与えられてしまった命と共に生き続けるしかなかった彼は、ある日、凜(りん)という少女から、敵討ちの用心棒を頼まれる。自分の目の前で惨殺された妹、町の面影を見出した万次は、彼女を守るために、自らの意志で前向きに生き始める。
木村は、万次の不死身だからこその苦悩を体現しつつ、凜との出逢いから輝いていく魂のありようを、力強く、そしてナイーヴに体現。右眼を潰した状態で、ふたりの前に次々と立ちはだかる強敵たちとの凄まじいバトルを、すべてノースタント、片目で演じきった。「めんどくせぇ……」と口にしながらも、その都度、凜のために全身を張って闘う万次は、凄みある形相が逆にピュアネスを際立たせるキャラクター。こんな木村が観たかった! と喝采をおくると同時に、こんな木村は観たことがない……とため息をつくしかない、パワフルな新境地を披露している。
万次が命をかけることになるヒロイン、凜に扮するのは『トイレのピエタ』『湯を沸かすほどの熱い愛』などの名演で熱い注目を浴びる新星、杉咲花。守ってあげたくなる可憐さと、一途さゆえの強気の姿勢が、たまらない融合を見せる凜を見事に演じ、木村を相手に豊かな伴走芝居を見せている。若干19歳とは思えない存在感。本作は、さらなる飛躍のステップボードとなるだけでなく、彼女のキャリアの代表作となるだろう。
不死の万次演じる木村拓哉、復讐を誓う少女凜を演じる杉咲花、そんなふたりを、それぞれ主役クラスの超豪華キャスト陣がバックアップする。
まず、凜の両親を殺した逸刀流(いっとうりゅう)統主、天津影久(あのつかげひさ)に福士蒼汰。凜にとっては仇敵、万次にとってはラスボスに当たる凄腕を、福士はときに優雅に、ときに怨念を込めて演じ、初の悪役を鮮やかに演じきった。両雄互角に渡り合う、万次との最後の一騎打ちは、涙なくしては見られない熱い戦いで観る者を圧倒する。
市原隼人は、極悪非道の無法者、尸良(しら)を痛快に演じ、物語全体に爪痕を残す。戸田恵梨香は、天津に想いを寄せる天才的女剣士、乙橘槇絵(おとのたちばなまきえ)を、艶やかに、せつなく魅せ、深い余韻を与える。三池組の常連、北村一輝は、異形の古参剣士、黒衣鯖人(くろいさばと)に扮し、グロテスクな肌触りで、映画の輪郭を際立たせる。
そして、市川海老蔵が、謎めいた剣士を、問答無用の美しい殺陣で表現。哀しみと哀しみがスパークする、万次との対峙は、本作の大いなる見どころである。
他にも、栗山千明、満島真之介、金子賢、山本陽子、田中泯、山﨑努という錚々たる顔ぶれが揃い、唯一無二の『無限の住人』ワールドを盛り上げる。
また、ヴィヴィッドなカラーに加え、たとえば大胆なスリットの入ったデザインの着物や、金髪、銀髪が入り乱れるヘアスタイルなどなど、従来の時代劇の枠には収まらないパッショネイトな世界観を醸成している点も見逃せない。
原作は、アジア各国でも熱狂的に支持され、米国で“コミックのアカデミー賞”と称されるウィル・アイズナー漫画業界賞の最優秀国際作品賞を受賞した沙村広明の同名コミック。時代劇の域をはるかに超えたオリジナルな世界観に、三池監督は深いリスペクトを捧げ、スケール感たっぷりに映画ならではの表現へと結実。多彩な人物たちが織りなす錯綜と絆のドラマはもちろん、創意あふれる武器を駆使した奔放な決闘の数々を再現、クライマックスでは300名にも及ぶエキストラが集結、2週間以上かけて撮影され、映画史に残る一大シークエンスがスクリーンいっぱいに繰り広げられる。
アクションの枠組みを更新し、エンタテイメントの可能性を大胆に拡張したその成果は、新たなる〈世界基準〉の提示。世界中の映画ファンの心を熱く鼓舞する一作、いよいよ登場である。