近代映画史上でもとりわけ魅力があり、印象的なキャラクターたちに生命を吹き込んできたイギリス出身の女優。その出演作には、批評家から高い評価を得た作品と、商業的な成功を収めた作品の両方が数多く含まれ、自身の輝かしい受賞歴からもその才能は際立ち、映画史に名を残すことは間違いない。これまでに合計7回ノミネートされた米アカデミー賞では、2008年のスティーブン・ダルドリー監督作『愛を読むひと』のハンナ・シュミッツ役で主演女優賞を受賞。この役では、ゴールデングローブ賞、米映画俳優組合(SAG)賞、クリティックス・チョイス映画賞の助演女優賞、英アカデミー(BAFTA)賞主演女優賞など、数多くの賞を獲得した。同年には、『タイタニック』(97)以来の共演となったレオナルド・ディカプリオと『レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで』にも出演。リチャード・イェーツ著の名作小説に基づくサム・メンデス監督による同作のエイプリル・ウィーラー役で、ゴールデングローブ賞女優賞(ドラマ)を受賞するとともに、数多くの賞にノミネートされた。
俳優一家に生まれ育ち、13歳でイギリスのTVに出演し始めた。17歳のときに出演したピーター・ジャクソン監督の『乙女の祈り』(94)で、たちまち国際的な注目を浴びるようになった。そして1995年に出演したアン・リー監督の『いつか晴れた日に』でマリアンヌ・ダッシュウッドを演じ、初めてオスカーとゴールデングローブ賞の助演女優賞にノミネートされ、BAFTA賞、SAG賞を受賞した。
96年には、マイケル・ウィンターボトム監督の『日蔭のふたり』でクリストファー・エクルストンと共演し、ケネス・ブラナー監督の『ハムレット』ではオフィーリアを演じた。97年、ジェイムズ・キャメロン監督の『タイタニック』で奇跡の生存者ローズを演じ、ゴールデングローブ賞(ドラマ)とともに、オスカーにも主演女優賞でノミネート。弱冠22歳にして、オスカーに2度ノミネートされたのは当時の史上最年少記録だった。
98年、ギリーズ・マッキノン監督の『グッバイ・モロッコ』でジュリア役を演じ、続いてジェーン・カンピオン監督のドラマ『ホーリー・スモーク』(99)でハーベイ・カイテルと共演。2000年には、フィリップ・カウフマン監督の文芸ドラマ『クイルズ』でジェフリー・ラッシュ、ホアキン・フェニックス、マイケル・ケインらと共演し、SAG賞にノミネートされた。
01年、リチャード・エアー監督の『アイリス』で、ジュディ・デンチ演じるアイリス・マードックの若いころを演じ、オスカー、ゴールデングローブ賞、BAFTA賞の助演女優賞にノミネートされた。同年にはマイケル・アプテッド監督の『エニグマ』にも主演。03年には『ライフ・オブ・デビッド・ゲイル』でケビン・スペイシーと共演した。04年の『エターナル・サンシャイン』では髪をブルーとオレンジに染めて、風変わりな娘クレメンタインを演じ、オスカー、ゴールデングローブ賞(コメディ/ミュージカル部門)、SAG賞、BAFTA賞の主演女優賞にノミネートされた。同年のジョニー・デップと共演した『ネバーランド』は、ナショナル・ボード・オブ・レビューより、04年度最優秀映画に選出された。
06年には、トッド・フィールド監督の『リトル・チルドレン』で5度目のオスカーノミネート(主演女優賞)を果たした。同年にはほかに3本の映画が公開された。まず、スティーブン・ザイリアン監督の『オール・ザ・キングスメン』ではジュード・ロウ、ショーン・ペンと共演。次に、アニメ『マウス・タウン ロディとリタの大冒険』(未)で声の出演をし、ロマンティック・コメディ『ホリデイ』でこの年を締めくくった。
11年には、HBOの全5話のミニシリーズ「ミルドレッド・ピアース 幸せの代償」でタイトルロールを演じた。数多くの栄誉に輝いた同作では、エミー賞、ゴールデングローブ賞、SAG賞の主演女優賞(ミニシリーズ/TV映画)を受賞。映画では、11年のベネチア国際映画祭コンペティション部門でプレミア上映されたロマン・ポランスキー監督の『おとなのけんか』、スティーブン・ソダーバーグ監督の『コンテイジョン』で、アンサンブル・キャストに加わった。
13年、ジェイソン・ライトマン監督の『とらわれて夏』でジョシュ・ブローリンと共演。14年には、ニール・バーガー監督の『ダイバージェント』、15年にはその続編でロベルト・シュヴェンケ監督の『ダイバージェントNEO』で、シェイリーン・ウッドリーと共演した。14年にはまた、アラン・リックマン監督の『ヴェルサイユの宮廷庭師』にも出演している。
最近では、15年にマイケル・ファスベンダーと共演したダニー・ボイル監督作『スティーブ・ジョブズ』で、ゴールデングローブ賞、BAFTA賞、ロンドン批評家協会映画賞の助演女優賞を受賞するとともに、オスカー、SAG賞、オーストラリア映画TV芸術アカデミー(AACTA)賞などにノミネートされた。同年には、ジョスリン・ムーアハウス監督の『The Dressmaker』でリアム・ヘムズワースと共演し、16年にはジョン・ヒルコート監督の『トリプル9 裏切りのコード』に出演した。17年には、撮影を終えたタイトル未定のウディ・アレン監督・脚本作が公開される予定である。
2012年、映画演劇に対する貢献が評価され、バッキンガム宮殿でエリザベス女王より大英帝国勲章第三位のCBEを授与された。