映画の舞台は、東京のどこかにある架空の町、空座町(からくらちょう)。佐藤監督は「BLEACH」の世界観の「日常と非日常が渾然一体なところに惹かれている」と語っており、ロケーションでも現実味が重視された。
まず、一護が最初に虚に出くわし、初めて戦う場面は、ゆるキャラでもおなじみの滋賀県某所の住宅街で撮影。休日の夜間、住民のみなさんのご協力をいただきながら、実際の住宅地ならではの臨場感を大事にシューティングされた。もちろん、虚はCGだが、濡れた路面も、家々もすべて本物。
また、一護と白哉が初めて対峙するシーンは横浜郊外の丘の上にある神社での撮影。鬱蒼とした自然に囲まれ、荘厳な雰囲気も漂う場には独特の吸引力があり、エモーショナルなムードを盛り上げた。また、同地の高台から町を臨む鳥瞰的な画も、劇中には使用されている。
クライマックスの崩壊したバスロータリーは、関東近郊にある広大な空き地に作り上げられたオープン・セット。原作にはない監督こだわりのシークエンスだ。駅前ならではの光景はセットとは思えないほど徹底されており、店舗のひとつひとつも内部まで作り込まれている。そんな町が、虚との戦いの影響で、段階を踏んでダイナミックに壊されていく。すべて、人力によるもの。映画美術の職人芸を体感させられる。映画『BLEACH』は、ロケのアナログ性とVFXのデジタル性の融合によって形作られているのだ。